命に変えても《２》【憂国のモリアーティ】 (ページ17)

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大英帝国の醜聞　第二幕　１ページ17

作戦が開始され早数日。
フレッドとAはもう使われることのなくなったベーカー街の廃れたアパートの一室にいた。
アイリーンの情報もだが、それと並行して以前から続けているシャーロックたちの監視もしなければならない。
ということで、今はシャーロックたちの監視の真っ最中なのだ。
この場所で一晩中見張りを続けていたのだが、シャーロックたちが出かけたあと戻ってきた様子はない。

『……シャーロックたち、どこに行ったんだろ』

「――そうだね」

フレッドは窓枠に差し込んだアイリーンの写真を見つめながら、Aに答える。
アイリーン・アドラー、本当に綺麗な人だ。
アイリーンが昔公演で訪れていた劇場の関係者を洗ってみたが手掛かりは無し。時間はかかるが、ここは女遊びが派手な貴族をリストアップして虱潰しに捜していくしかないか……。

『……あ、来た』

そんな考えを巡らせていたフレッドの耳にAの声が届く。
その声にフレッドは一室の壁に身を寄せながら窓の外に目を向けた。
ガラガラと一つの馬車がシャーロックのマンションの前で止まる。

「(……帰ってきた)」

二人で部屋の中から外の様子を伺う。
馬車からは当然の如くシャーロックが姿を現す。一晩中何をしていたかは知らないが、帰ってきたことには帰ってきたのか、と少し安堵の表情を浮かべた後だった。

『――！！フレッド、あれ！！』

Aの声に馬車を凝視する。
シャーロックを追うように現れたその姿は、艶やかな金の髪に、美しいその顔立ち。

「(アイリーン・アドラー！？)」

窓に立てかけたその写真の姿がそのまま、そこにあった。

『――なんでシャーロックたちと一緒に！？』

緊急の事態に二人の額に汗が流れる。

「とりあえず、アルバートさんに報告しよう」