命に変えても《２》【憂国のモリアーティ】 (ページ1)

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二人の探偵　第一幕　４ページ1

ウィリアムの名前を言い放ったシャーロックにAは動じることなく思考を巡らせる。

恐らくは、はったりと言ったところだろう。
それはホープの死に際まで見ていた、もとい監視していたこちらだからこそわかること。
ホープは確かにウィリアムの事を口にしていない。
だが、ここでそのことを口にしてしまうとウィリアムがこの一連の事件に関わっていることが透けて見えてしまう。
シャーロック・ホームズ。この男はやはり賢い。
何かしでかす前に、真実に気づく前にどうにかしなければ――。
その事はどうやらルイスの意見と合致しているようでルイスも手元に置かれた食事用のナイフをみつめている。

沈黙。
その後にウィリアムが口を開いた。

「……なるほど」

少し目を伏せがちに答える。

「それは面白い主張ですね……ですがやってない事を証明するのは不可能です」

尚も緊張の空気は変わらない。

「そして……“私がやった”と証明するのがあなたの仕事では……？」

その言葉にシャーロックは少しの沈黙のあと「……クッ」とこらえられず声を漏らすと、次の瞬間には大笑いしだす。

「ハッハッハッ！！冗談！！冗談だよ！！こいつは“悪魔の証明”だもんな！！スマンスマン！！」

嬉々とした無邪気な子供のような笑みを浮かべるシャーロックに思わずつられて笑いそうになる。そこをどうにか我慢して冷静に会話を聞く。するとシャーロックは片目を閉じ、

「……だけど、そのキレる犯罪卿ってのがお前だったら良いなって思ってたんだよ」

得意げに言ってみせる。その言葉にウィリアムは目を丸くした後、口角をスッと上げ、

「私を捕まえれるなら捕まえてごらんなさい。ミスターホームズ」

緋色の瞳が不気味な輝きを見せる。
不敵な笑みを浮かべてウィリアムは言った。