【歌い手】期待して損した。

＊ ページ28

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坂田が無表情で温まったご飯を口に運ぶ姿を暫く無言で眺めていると、彼がこちらに視線を向けて口を開いた。



坂田「Aは、俺の事嫌いになった？」



『え？』



真剣な丸い瞳に見つめられて、視線を外すことが出来くなて私も彼を見つめ返しながら聞き返す。交わった視線は何処と無く気まずくて逃げ出したくなった。



坂田「俺、感情任せに叫んだやろ。Aが怯えてるん本当は見えとったんに、感情的になってまふにも当たってもうた」



目線を机へと下げて「こんな俺、Aは嫌いになった？」と再び質問を投げかけてくる。

そんな事、嫌いになる訳、ないのに。



『私は、坂田が好きだよ。嫌いになんてなれない。このシェアハウスに誘ってくれたのは坂田じゃん。私のことをいつも助けてくれたのはね、坂田とるったんなんだよ』



坂田「ほんま……？嫌いに、ならん……？」



何だかんだでいつも助けてくれるのはるったんで、気に掛けて行動に移してくれるのは坂田なんだよね。

どちらも私の大切な人。

嫌いになんて、なれる訳がないんだ。



『嘘じゃないよ。……えっとさ、今回の入居者さんもできるだけ歓迎しようと思うんだ。確かに最初から印象悪いし、居心地は悪くなると思うけど……できるだけでいいから、頑張ろう』



坂田「俺もそう思っとったとこやで！やって、あっちは一応女の子やもんな。変なことせえへん限りは頑張って慣れようと思う！！」



それに親が勝手にやったことだし、娘さんが悪い子だとは限らないもんね。

その後、坂田はいつもの笑顔で残りの料理をペロリと平らげた。

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