65 ページ16
．
元彼が黙る。
そして困惑したように視線を岸くんから逸らし、空をさ迷い、すがるように私を見た。
元彼が優しい人だってことはわかってる。きっと、優しい人だから好きな人が出来ても私を傷付けたくなくて捨てられなかった。バレて私を傷つけたから、その責任として別れた。
でも彼の優しさはもう私に必要じゃないってこともわかってる。
「本当に好きだったけど、あの時を境にあなたのことはもう好きじゃない。これからも好きにならない。さよなら」
真っ直ぐ目を見て言う。元彼の目は見開かれ、伏せられる。私は岸くんの腕を引き、立ちすくむ彼に背を向けた。
掴んだ岸くんの腕は少し汗ばんでいた。
「ごめん」
出店が並ぶ通りに出ると岸くんが呟いた。思ってもいなかった言葉に腕を引いていた手を離し、振り返る。
「何で謝るの？」
「いや、カッとなって勝手なこと言ったけど、余計だったかなって」
岸くんが私のために怒ってくれて、私の気持ちを汲んでくれた。それだけで私はすごく嬉しい。
岸くんからしたら突然知らない男が来てわけわからないこと言われたあげく私に無理矢理腕を引かれて場所移動させられて、謝るのは私の方なのに。
「助かったし嬉しかった。ありがとう」
岸くんと出会ったとき、元彼に振られた直後だった。
初めて会った、酔っぱらって半泣きの私の話をちゃんと聞いてくれた。
だから元彼とのいざこざは全部岸くんに聞かれている。気を使ってなのか、そのことに今まで岸くんが触れてきたことはなかったけど。
＿お前知らねぇだろ、Aがあの夜どんな風に泣いてたか
覚えててくれて、今あんな風に庇ってくれて。もっと岸くんのことを好きになってしまったことなんて、あまりに当然だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 566人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽち(プロフ) - とても素敵でとっても好きです！いつか続きが読める日を楽しみにしています♡ (2023年4月11日 16時) (
レス) id: fb4236f219 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴ - ゆっくりでいいので、ぜひお話の続きぐ読みたいでひさ^_^ (2022年10月16日 23時) (レス) id: 3873617619 (このIDを非表示/違反報告)
ほるん(プロフ) - このお話の岸くんが大好きです！また続きが読める日を楽しみに待っています！ (2021年7月4日 19時) (レス) id: a9d3d404b9 (このIDを非表示/違反報告)
ほるん - 大好きなお話です！再会楽しみに待ってます(^^) (2020年9月23日 22時) (レス) id: a9d3d404b9 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - 大好きなお話で、何回も読み返しています。頼さんの書かれる岸くんもジンもとても魅力的です！岸くんの気持ちが気になります♪いつもありがとうございます。更新楽しみにしております。 (2020年8月30日 22時) (レス) id: be10b265a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：頼 | 作成日時：2020年4月13日 23時
