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元彼とは、一方的に別れを告げられたあの日から一度も連絡はとっていない。岸くんに出会ってからはこの人を思い出す隙なんてないくらい毎日充実していたのだ。初めてだらけの苦い思い出を順調に忘れていたのに、どうして今。
元彼をきっと睨む私と私を見る元彼のただならぬ雰囲気を察したのか、岸くんは戸惑ったように硬直する。
元彼はそんな岸くんを一瞥すると、一直線に私に歩いてくる。
「A、……会いたかった」
「私は会いたくなかった」
ぐっと力を込めて睨む。目を逸らしたら負けな気がした。
元彼は困ったように笑う。
「そうだよな、会いに来てごめん。でも俺Aのことがまだ好きだ」
その言葉に、もう一ミリも心は動かない。
「……私も本当に好きだったよ」
でも今は嫌いだ。誰のせいで別れたと思ってるのだろう。元彼の瞳が光を得る。彼は嬉しそうに少し口角を上げて、
「じゃあやり直そうよ。きっとまたAに好きになってもらうよう頑張るから。俺やっぱり、Aじゃないとだめなんだ」
腕を伸ばしてきた。
掴まれる、と思って咄嗟に腕を引っ込める。
もうこの人に触れられたいとは思えなかった。
パシ、と大きい手が元彼の腕を掴んだ。
「あの、嫌がってるの分かんないんすか」
「は？」
岸くんは眉を寄せ、強い口調で言う。元彼は片方の眉を上げて岸くんを睨んだ。そして呆れたようにため息をつく。
「Aの初めては全部俺なんです。君が誰なのか知りませんけど、俺は」
「うるせぇな」
遮る低い声。
振り払うように岸くんの手が離され、元彼の腕はだらんと下がる。
岸くんの肩ごしに見えるその表情は、怒りと、困惑と、恐怖。
「お前知らねぇだろ、Aがあの夜どんな風に泣いてたか。お前なんかにAは勿体ない」
普段よりも乱暴な言葉使いに怖いとは感じなかった。
大きい背中だなと思った。
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ぽち(プロフ) - とても素敵でとっても好きです！いつか続きが読める日を楽しみにしています♡ (2023年4月11日 16時) (
レス) id: fb4236f219 (このIDを非表示/違反報告)
ぴぴ - ゆっくりでいいので、ぜひお話の続きぐ読みたいでひさ^_^ (2022年10月16日 23時) (レス) id: 3873617619 (このIDを非表示/違反報告)
ほるん(プロフ) - このお話の岸くんが大好きです！また続きが読める日を楽しみに待っています！ (2021年7月4日 19時) (レス) id: a9d3d404b9 (このIDを非表示/違反報告)
ほるん - 大好きなお話です！再会楽しみに待ってます(^^) (2020年9月23日 22時) (レス) id: a9d3d404b9 (このIDを非表示/違反報告)
えり(プロフ) - 大好きなお話で、何回も読み返しています。頼さんの書かれる岸くんもジンもとても魅力的です！岸くんの気持ちが気になります♪いつもありがとうございます。更新楽しみにしております。 (2020年8月30日 22時) (レス) id: be10b265a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：頼 | 作成日時：2020年4月13日 23時
