． ページ33
．
先輩は彼女の前ではとても優しい顔をする。優しくて、彼女が愛しくてしょうがないみたいな、そんな顔。
略奪愛とかは考えたことない。だって好きな人の幸せが自分の幸せだから。本当に好きな人の幸せは願えるって何かに書いてあったもん。
私は先輩の、あの優しい顔が一番好きだ。
小林の視線が痛い。「そんなわけないでしょ」って目が言ってる。まだ何も言ってないのに、小林は私の心が読めるのかな。
無言のまま私は中庭を見つめ小林は携帯に視線を戻したとき、トントンと階段を上る足音が廊下に響いた。私も小林も驚いて、階段の方向を見つめる。静かだから物音が響くんだ。
じわじわ大きくなる足音はよく聞くと、二つ。何となくここにいたらいけない気がして、小林と顔を見合せ、素早くランチバックと水筒を持って目の前の空き教室に入った。
足音は階段を上りきって少しすると止まった。ドアの向こうの少し先に知らない二人の気配がある。
「こんなところまで連れてきちゃってごめんね。二人きりで話したくて……」
二人きりじゃないんだよなぁこれが。隣の小林をちらりと見ると、人差し指を口にあてて静かにしろのジェスチャーをされる。わかってるよそんなの。
「永瀬くんのことが好きです。付き合ってください」
聞こえてきた緊張した声に、ごくりと唾を飲む。やっぱり告白だった。にしてもここを告白の場に選ぶなんてセンスがある。誰もいないし、確かにぴったりだろう……私たちはいたけどね。
「ありがとう。でもごめんな」
聞こえた申し訳なさそうな柔らかい声に、呼吸がリセットされたような感覚になった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 679人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あー(プロフ) - 本当に面白い作品でした！幸せをありがとうございます！ (2020年5月11日 16時) (
レス) id: 027e812693 (このIDを非表示/違反報告)
kaede0318(プロフ) - とっても面白かったです！あと、借り物競走の時の紫耀くんのお題ってなんだったんでしょうか？？ (2020年4月22日 8時) (レス) id: 71eb8c3baa (このIDを非表示/違反報告)
キンプリ大好きちゃんのみー(プロフ) - sideとか誰が言ってるのか書いてあると読みやすいです(*^^*) (2020年3月19日 11時) (レス) id: f3c8e2ad49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：頼 | 作成日時：2019年10月21日 20時
