52 ページ13
．
細い指に掴まれた腕が、熱い。
「言い逃げなんて、ズルいやん」
永瀬くんの声が教室に響く。
世界に二人きりみたいだ。
何も言わない私に、永瀬くんの腕を握る力が少し強くなる。
鞄をとるために僅かに上げた手を下ろし、永瀬くんに向き直った。
今までにないくらいまっすぐに、永瀬くんの視線が向けられる。
その長い睫毛が震える度に私の血流もどんどん速くなるよう。
「……俺も、」
形のいい唇が薄く開き、合わせて視線が一瞬外される。
それでも私が呼吸をのむのと同時にもう一度、強く、投げられる。
「俺も、好き」
透き通った声が耳に届いて、脳に届いて意味を理解して、息が止まった。
目頭が熱くなって鼻が痛くなって、たまらず下を向く。
滲む視界の端で永瀬くんの、私の腕を掴むのと反対の腕が躊躇ったように一度空を切る。
そして掴まれた腕を引かれ肩に反対の手が回ったと思うと、永瀬くんのにおいが鼻をかすめた。
永瀬くんの呼吸の音がすぐ近くで聞こえる。
「ごめんな。あんときも勇気出してくれてたのに、あんな言い方してもうて」
「……っほんとだよ」
「ほんまやね。それでも、また好きって言ってくれてありがとう」
頭の上から降ってくる声も肩を抱く細い手も優しくて、涙が溢れる。
こんなに近いと永瀬くんのシャツが濡れちゃうのに、図々しくも私の手は離れたくないと言うかのように彼のシャツを握りしめていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 679人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「永瀬廉」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あー(プロフ) - 本当に面白い作品でした！幸せをありがとうございます！ (2020年5月11日 16時) (
レス) id: 027e812693 (このIDを非表示/違反報告)
kaede0318(プロフ) - とっても面白かったです！あと、借り物競走の時の紫耀くんのお題ってなんだったんでしょうか？？ (2020年4月22日 8時) (レス) id: 71eb8c3baa (このIDを非表示/違反報告)
キンプリ大好きちゃんのみー(プロフ) - sideとか誰が言ってるのか書いてあると読みやすいです(*^^*) (2020年3月19日 11時) (レス) id: f3c8e2ad49 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：頼 | 作成日時：2019年10月21日 20時
