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あのね、この森には魔女が住んでるんだって。強くて優しい、魔女が住んでるんだって。
こんな私のことなんかきっと助けてなんかくれないだろうけど、きっとAのことは助けてくれるから、ってママは言ってたの。

......それに、もし助けてくれなくても。

「ねぇ、ママ」
「......なぁに?A」
「なんか、眠くなってきちゃった」
「そ、......っか。そうだよね。そろそろ(・・・・)だもんね」
「ねぇ、お家に帰ろうよ」
「大丈夫。寝ちゃいなさい、ね?」

ゆっくりとママがわたしを抱いていた腕を緩める。
そして再度わたしを優しく抱きかかえ、森の中でも一際大きな針葉樹の根元によりかからせるようにしてそっと下ろす。

しゅる、とママが巻いていたマフラーを解く。真っ赤なそれが、ほとんど夢に飲み込まれたわたしの首に優しく巻きつけられる。そしてママはコートを脱ぐ。
なんで、寒いよ、風邪ひいちゃうよって、そんなこと、夢に捉えられかけたわたしが言えるはずもなくて。


「......大丈夫。もし魔女が現れなくても」

夢うつつ、薄ぼんやりと見えたママの顔。
そっ、と頭にその手が置かれる感触を合図に、()は意識を落とした。


「凍死はね、1番楽な死に方なんだって」


その()の言葉を、最後の記憶として。



__目を開く。
あまりにも長い昔話。とっくに冷めたホットミルクに口をつける。
たん、と軽くログハウスの床を蹴り、意味もなく揺らす安楽椅子。物音ひとつ発することなく聞いていた()の顔色を伺う。そこから感じとれる焦燥感。

「......ちゃんと話したのはさ、初めてだよね。出会う前のこと」
「それで?何が言いたいの」
「だから、もう分かってるの。全部」

無理やり飲まされた液体に入っていた即効性の薬、意識を失う直前に聞いたその言葉の意味。母がなんの仕事をしていたのか。私たち母娘の生活が、一般的な水準に比べてどれ程苦しかったのか。
そして母の年齢が、おそらく母親となり得るにはまだ未熟なものであったことも。

「そりゃあ私はまだまだ子供ですよ。あなたに比べれば。でもね、人間としてはもう十分大人なの」

今年の春、私はあの日の母の年齢を超えた。
だから、お願い。そう、頭を下げる。


「知ってるんでしょ。ママがこの森の、どこで死んだのか(・・・・・・・・)


だから、Broooock。
それとも、母の言っていた通りに「魔女」と呼ぶべきか。


彼はまだ、首を縦に振ってはくれない。

・→←Forever



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ビー玉(プロフ) - 次作品もぜひ読みたいです!たのしみにしてます〜! (6月3日 19時) (レス) id: 7a07f59bfb (このIDを非表示/違反報告)
すおう(プロフ) - しゃけさーもんさん» コメントありがとうございます!私もギルティ1番気に入っているので、そう言っていただけて本当に嬉しいです‼︎のんびり更新ですが見守っていただけるとありがたいです......! (6月3日 17時) (レス) id: 4a16b8c5b0 (このIDを非表示/違反報告)
しゃけさーもん - 個人的に10億と有罪のお話で泣きました。エモい?というか心がぐわっとする感じ(語彙力)で大好きです!!次回作も作っていただけるんですか、、、!楽しみに待ってます!! (6月3日 14時) (レス) id: a2c9c247fb (このIDを非表示/違反報告)
すおう(プロフ) - ビー玉さん» コメントありがとうございます‼︎まだ手探りで書いている状態なので、そう言っていただけるとほんっっとうに参考になります!この短編は次話(6人目)で完結かなぁと考えているのですが、近いうちに次作品も作る予定なので、よければ是非......! (6月3日 7時) (レス) id: 4a16b8c5b0 (このIDを非表示/違反報告)
ビー玉(プロフ) - とてもお話好きです!けどお話の中の流れや誰が話しているのかが分かりにくいところもあるので(個人的に)読みやすくしてくれたら嬉しいな〜って思います!これからも読み続けたいです!応援してます! (6月3日 1時) (レス) @page21 id: 7a07f59bfb (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:すおう | 作成日時:2023年3月3日 16時

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