私とナイスガイと。 (ページ2)

今日:9 hit、昨日:0 hit、合計:26,887 hit

１私と梅雨と桜の日とページ2

｢凜夏さん入りまーす！｣

｢お願いしまーす。｣

ハーフアップのボブの髪に、白い靴下。そして現役時代の袴。

...袴？

伊沢さんに、そろそろ顔を出してもいいだろうと言われ、指定された通り実家から袴を送って貰って、何故か袴を着ている。

和室に入ればげっそりした顔の、川上さん。そして、百人一首。

そうか。私は納得する。どうやら私の初登場動画はかるたのようだ。

実際私はかるたバカで、中学校2年生でかるたA級をとると同時に滋賀県の強豪膳所高校に行くことを決意した女である。

現役を退いてもう５年目。聞いていれば復習の１つや２つちゃんとしている。

｢撮影始めまーす。｣

ふと前を見ると、川上さんの顔が不安から絶望に変わっていた。なるほど。彼は私の相手役な訳か。たぶん理由は文学部だからだろうな。

文学部かぁ。私も昨年まで学生だったからなぁ。

私は弟からの電話が無ければ、今頃どっかの出版社に勤めていただろうし、こんなに楽しい日々を送ることなんてなかっただろうなぁ。

まだ桜の咲いていた頃を思い出して感慨にふける。