第十七話 懐かしい景色 ページ18
翌日の日暮れ頃、冬獅郎と冬華は前日と同じように、夕日の見える高台のガードレールに腰をかけて、伝令神機を操作していた。そんな時、｢冬獅郎！冬華！｣と呼ぶ声が聞こえ、2人の傍で走ってきた夏梨は止まった。
冬「またお前か…」
冬獅郎は伝令神機を操作したまま呆れたように言う。
夏「何で、練習来ないんだよ？」
冬「俺はやるとは言ってねえよ」
妹「だいたい、私達はそんなに暇じゃねえ」
夏「小学生の癖に何がそんなに忙しいんだよ？」
冬･妹「うるせえよ」
2人は尚も伝令神機を操作し続ける。
夏「ねえ、何であんた達ここに来るの？
冬･妹「…………」
冬「…別に」
冬獅郎と冬華は伝令神機を操作していた手を止めると顔を上げ、夕日を眺める。
冬「ここが1番よく、空が見渡せるからな」
妹「…………」
2人は潤林安のおばあちゃんの家から見えていた景色を思い出す。
桃「もう！聞いてるの？シロちゃん！」
冬「シロちゃんっての、やめろっつってんだろ！」
桃「私と同じとこに入学できるようになったら、苗字で呼んであげる」
冬「ふざけんな！誰があんなとこ…」
桃「もう…冬華ちゃんは素直に聞いてくれるのに…」
妹「別に素直に聞いてるわけじゃねえし…」
そう話す3人の向こうには綺麗な橙色に染まった景色が広がっていた。
冬「…懐かしいんだ」
妹「(桃……)」
夏「ふーん…。…懐かしいって、幾つだ？お前ら」
冬「お前には関係ねえだろ」
冬獅郎と冬華はガードレールを跨ぎ、道に戻ると昨日と同じ方向に歩き出そうとした時、2人の伝令神機が2つ同時に鳴る。2人は足を止め、それぞれの伝令神機を開き、確認すると駆け出す。だが、走り出そうとした2人の手を夏梨がそれぞれ掴んだ。
冬･妹「!?」
夏「そっち行っちゃダメだ！」
冬･妹「え？」
夏「あ…いや…なんて言うか…そっちは、悪い感じがするから…」
夏梨は一瞬言い淀み、2人から目を逸らしながらそう応えた。冬獅郎と冬華はそんな夏梨を見据える。
冬･妹「(こいつ…まさか…)」
その時、再び伝令神機が鳴り2人は伝令神機を開いて確認する。画面上に点滅していた赤い点は数回点滅した後、そのまま消えていった。
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作者名：ひな☆ | 作成日時：2020年9月27日 17時
