生放送の主役は私だ！3【wrwrd】 (ページ18)

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89話ページ18

「で、どうなん？みんな連絡ついた？」

大先生の声を皮切りに、複数の声が一斉に話し出した。
やかましいとは思うけどそれどころやない。
煙草をふかしながら握り締めたスマホの画面を見る。
数時間前に送った「何やってん」という俺のメッセージに対する応答は無かった。
応答が無いどころか既読にすらならん。
それは他のみんなも同じみたいで。

「あかんわぁ、何回電話しても出ぇへん」
「LINEなんか未読のまま動かへん」
「お前らもか…」

それぞれがそれぞれに心配そうな声を吐き出す。
アイツがこれ程までコイツらに気に入られているのは先輩としても兄(のような心持ち)としても嬉しいものだが、そんな事に口元を緩められる場合やない。

今話題の女、俺の後輩であるAと連絡がつかんねや。
ここ暫く収録も通話も放送も、誘っても断っていたのは知っとった。
忙しいんやろか、なんてみんなで話しとったのもついこの前の事で。
でも返信は必ずあったから特に気にしてもなかってん。
今朝の我々だグループLINEで次の撮影何するかーなんて話してた時、ふと違和感を感じた。
自分の話題が出ても反応の無いアイツ。
それに気付いてから、嫌な予感が消えへんねん。

「シッマなんか聞いてへんの？心当たりとか…」
「あったら別の話しとるわ」

直属の先輩やからって俺に連絡が入っとると思ったんやろうが、お門違いや。
既読も電話も何も無い、みんなと同じ。
せめて俺にくらい連絡くれてもええんやないか、と自意識過剰にも思う自分にも腹立つ。

「シッマが何も知らんのならお手上げだろー」
「まままさか誘拐とか…！？」
「やめぇやロボロ、縁起でもない事言うな」
「…すまん…」

みんながみんな、やきもきしとるんは分かる。
誘拐なんてアイツに限って…とは思うものの女だ、相手が男数人だったら逃げられもせんやろ。
ロボロの発言でみんなが黙り込む。

「もー埒あかんわ、家に行ってみた方が早いんとちゃう？」

考えたくないとばかりに弱々しく発する大先生にちらほらと賛同する声。
家なぁ…。

「俺家は知っとるけどコードわからんぞ」

アイツは親の都合で結構なセキュリティーのマンションに住んどる。
送り迎えはした事はあるものの中に入った事は無く、エントランスのパスコードも聞いた事無いしAの部屋がどこかもわからん。
事情を話して入れてもらったりは出来るかもしれんが…。
そう考えると、結構知らない事があるもんやなと少しだけ気分が落ちた。

気がする。