スカブロ世界のイレギュラー【wrwrd】 (ページ7)

今日:3 hit、昨日:5 hit、合計:13,943 hit

攻略5日目ページ7

「落ち着いて、ちょっと待っとってください」

トントンさんに抑え込まれゾムさんから離れた僕は、鬱さんが落ちた穴の横で座り込み膝を抱えてそこに顔を埋めていた。
他の三人は呑気に話をしている。
仮想空間、だと言った。
そうなのだとしたら生身の体が死ぬわけではないのだろうが、確かに鬱さんは消えてしまったのだ。

「いやぁ、参ったわー。ゾムさん頼むでぇ」

ふと聞こえた声にピクリと体が反応する。

「見てみぃA」

そろりと顔を上げてみる。
そこには

「はろーAちゃん、ただいまやで～」

へらりと笑う鬱さんが、やはりひらひらと手を振っていた。

「鬱さん！」

駆け寄って彼の体に異常がないかあちこち触りまくる僕に、彼は苦笑しながらポンッと頭に手を乗せる。

「なんともないで」

ニッコリと笑むその顔に嘘はないだろう。
安心してへなへなと腰を抜かす。

『び…っくりしました…』
「あぁ、あんなんいつも通りやで」

いつも通りとは。
どうやらゾムさんは好奇心旺盛で悪戯好きな人らしく、ちょくちょく人に悪戯を仕掛けるらしい。
さっきのも、それだとか。

「な、死なへんやろ？」

僕の背中からひょっこりと顔を出して覗き込んでくる彼のその素敵な笑顔を殴りたい。
殴る前に殺られそうだけど。

「まぁ死なへんと言っても、感じる痛みはホンモンなんで怪我とか気をつけてください」

眉を下げてため息をつくトントンさんから注意を受ける。
なるほど、痛みは感じるのか。
確かにさっきはお腹は空いてたからなぁ。

「あぁ、あと！死ぬ時も苦しみはそのまんま味わうから！」

ほんと勘弁やで、とげっそりした顔の鬱さん。
……それならば死ぬわけにはいかない。

「それから…さっきはすまんかったなぁ」

ポリポリと気まずそうに頬を掻くゾムさんが何に対して謝っているのかわからない。
担いで跳んだ事か。
いきなり鬱さんを落とした事か。
どちらにせよ僕の為の行動だったのだ、謝られる事ではない。

「……助けられんかった。お前、１回死んでんねんで」

まさかの事実にまた意識が飛びそうだった。
僕は、一度死んでいる？
なんで、どうして。

「餓死や。腹減りすぎて体力がなくなったんよ」

空腹、餓死、痛み、死の苦しみ。
この世界の創造者は、とんでもない人だ。