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電話の向こうの彼の声は柔らかく笑っている。
『…ありがとうございます』
SE「全然平気そうだね？過保護すぎたな」
『いや、ヒョンのおかげです。』
SE「俺はチームメイトでもなければ、現場のスタッフでもない。本当はそばにいてやりたいけど出来ない。それをもどかしく思うほど、お前のことが好きなんだよ。」
「好き」という言葉は、魔法の呪文だ。
『好き……』
不意に、スマホを持っていない方の手がテンさんの手に包まれた。
SE「そう、好き。Aはさ、他の人からの好意にちょっと怯えすぎだと思う。」
言葉数のそんなに多くないヒョンがこんなに饒舌に話してくれるのは本当に伝えたいことがある時だけだ。その優しい声になんだか泣きそうになって、下唇を噛んだ。
SE「例えばお前の大好きなテンが“自分なんて好きになってもらう価値がない”とか言い出したらさ、どう思う？自分の応援は届いてないんだって悲しくなるだろ？」
『はい。それに…心配になると思います。』
SE「好意を受け取るっていうのはさ、気持ちを渡してくれた相手に敬意を払うことだと思うよ。自分を卑下するのはお前を評価してる人間に対して失礼だから。」
『ッ！！』
頬が濡れるのを感じる。
ヒョンの言葉は、肩の荷を下ろしてくれているようだった。
ステージに立つ姿を誰かに好きだと言ってもらいたいと思う強い気持ちが不安を生んで、好きになってくれる人がいるだろうか？という疑念になり、好きになってくれる人がいるはずないという被害妄想にすり替わっていた。
『う、うぅ…』
ステージに立つのが怖いなんて、私のデビューを心待ちにしてくれているジョンウやみんなに失礼だ。
TN「何で泣いてるの…」
私を大切に思って認めてくれるヒョンやメンバー達のおかげで何度だって自信を取り戻せる。
『ヒョン、今日のステージ見ててくださいね』
SE「当たり前だろ〜だから泣くな」
テンさんの様に歌って踊ってパフォーマンスをして、誰かの心を奪ってみたい。私にとってテンさんがそうであった様に、憧れて、救われて、近づきたいと願う対象に私は選ばれるだろうか。
がんばれといってくれたヒョンにお礼を伝えて電話を切ると途端にテンさんに抱きしめられ、私も思わずしがみついた。
泣きながらもこぼれそうになる「好き」の２文字。
それが私たちにとって受け取ることも渡すことも禁じられているものであることに気付いたのはその時だった。
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柊(プロフ) - ももさん» ありがとうございます（ ; ; ）とても励みになります…！ (2023年1月21日 23時) (
レス) id: a5081d8636 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 最初からイッキ読みしちゃいました！！めちゃめちゃ面白いです！ (2023年1月6日 16時) (レス) @page12 id: b796448ecc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柊 | 作成日時：2022年10月21日 8時
