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監督さんやスタッフさんたちが慌ただしく動く中で、テヨンイヒョンが舞台袖にいる私の手を取って、ひっきりなしに声をかけてくれる。
TY「寒くない？」
『はい』
TY「何か確認しておきたいことはない？」
『大丈夫です』
TY「水分取った？」
『はい、取りました』
TY「大丈夫、できる！できるよ！」
『...うまくやってみせます』
テンさんが私を見ている。
私もテンさんを見ている。
だからとなりにいるテヨンイヒョンがどんな表情をしているのかはわからない。
《スタンバイお願いします》
《本番収録五分前です》
衣装もメイクもばっちり決めて、ヘッドセットを付ける。
まだなれないイヤモニをいじりながら所定の位置に立った。
今回の収録は事前収録だ。決められたスケジュールの中で何回かリテイクがなされる。
時間は有限。一回でも多くいいパフォーマンスを映像に残せるようにしないと。
全身真っ黒な衣装の五人組はそれだけでかなりオーラがあったに違いない。
そのうえ誰も何も話さずにいるのが余計に雰囲気を醸し出していたんじゃないかと思う。
今この瞬間の私たちは奇術師だ。
この事務所の非公開練習生として生活を送る日々が3年続いた。日本からやってきた私は、世間の誰にも存在を知られることなく、ただひっそりと練習を続けている。
そんな日々がもう終ろうとしているのを感じる。
友達にもなれなかった練習生たち。
名前の載らなかった月末評価の結果。
もう二度とあの空間には戻れないだろう。
デビューするか跡形もなく消えていくかの二択なのだ。
後ろに道は残っていない。
カメラの向こうにNCT加入を告げられた時にいたスタッフたちが見えた。
体は軽く、呼吸も楽で、自分の芯が燃えているように熱い。早くこれを踊って発散したい。
準備は万端。
覚悟も決まっている。
でも、いつもと何かが違った。
カウントダウンがイヤモニから聞こえて、何千回と繰り返し聞いた曲が流れだす。
いつもよりうまく踊れて、いつもより声の伸びが良かった。瞬きもいらないほど長くカメラを見据えることができて、呼吸も乱れない。
音がつま先から体を突き抜けて踊りの形となって放たれていく。
絶対にデビューするんだ。
絶対にこの舞台を成功させるんだ。
何かが違うけど
何が違うのかはわからない。
すべてうまくいっているはずで、
でもなぜか楽しくなかった。
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柊(プロフ) - ももさん» ありがとうございます（ ; ; ）とても励みになります…！ (2023年1月21日 23時) (
レス) id: a5081d8636 (このIDを非表示/違反報告)
もも(プロフ) - 最初からイッキ読みしちゃいました！！めちゃめちゃ面白いです！ (2023年1月6日 16時) (レス) @page12 id: b796448ecc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：柊 | 作成日時：2022年10月21日 8時
