…第弐拾弐幕… ページ25
永倉さんのもっともな言い分に土方さんは再び頭を抱える。
「総司の意見も一理あるとは思うけどな。…ま、俺は土方さんや近藤さんの決定に従う。」
…血に狂ってる？確かにあの隊士の様子からして正気ではないと、どこかが壊れてしまっていると感じたけど”血に狂った”なんて表現は私の中には生まれなかった。そりゃあ、私の想像力が足りないというか、文学的な頭の作りではないからだと言ってしまえばそれまでだけど。
…でも言われてみれば、それが最も適切な表現かも知れない。
「…オレは、逃がしてやっても良いと思う。」
ポツリ。藤堂さんが言葉を落とした。
「こいつは別に、あいつらが血に狂った理由を知っちまった訳でもないんだしさ。」
同情というか、たったこれだけのことで殺してしまうには可哀想だからと。彼の表情からはその類の感情が読み取れた。しかしそれと同時に、私は聞いてはいけない事を聞いてしまったのだと悟った。彼は今私に聞かせてはいけない事をそうとは気付かずに軽々しく口にしてしまった。
「平助、余計な情報をくれてやるな。」
重苦しいため息とともに、土方さんは藤堂さんを軽く睨んだ。
幹部達は全員口には出していないものの、当たり前の様にあの表現を流していた反応からしても”血に狂っている”という共通認識を持っている。そして、この場に隠された最大の謎はきっとそこにあるのだろうと。はっきり何とは解らないが、新撰組が、彼らを血に狂わせる原因を持っている。
彼の何気ない一言でこの推論を、私の中で完成させてしまった。
そんな推論を完成させたからと言って、直接的な原因がわかった訳でもないし、おおっ広げに新撰組は人間を血に狂わせるような事をしているなどと吹聴しようとも思わない。そもそもこれは推論であって、現状はただの妄言にすぎない。
「あーあ、これでますます、君の無罪放免が難しくなっちゃったね。」
くつくつと身体を小さく揺らして笑う沖田さんは、恐ろしい存在に映った。
昨晩の様子からしたってそうだろう。彼は斬り合いを楽しみにしていた、今日だって、時折残念だとは口にしながらも私を殺さなければいけないと何度この場で発言しただろうか。
…この人も、もしかしたら血に狂っているのかも知れない。
静かな思考の縁で、そう思った。
ともかく彼らにとってはどこまで私がわかっているか知れなくても、余計な情報を持ってしまった私を解放する事は当初より格段に難しくなってしまった事だろう。
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。 - 文才がすごいですね！引き込まれるような作品で、今まで見たことのない、新しいトリップものかなーと思いました。とても面白かったので、次の更新を楽しみにしています。 (2017年4月14日 16時) (
レス) id: f3711a96f0 (このIDを非表示/違反報告)
総ちゃん - 不思議な作品に釘付けでした！続きが気になります！更新頑張ってくださいね(*￣▽￣)ノ~~ ♪ (2016年10月5日 8時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：刹那 帝 | 作成日時：2013年6月1日 23時
