…第弐拾壱幕… ページ24
やはり、どうにもならないのだろうか？私は一体何を見てしまったというのだろう。
…いや、記憶がなくなっている訳では無いのだから何を見たかといえばコレだと答えられるのだが、彼らにとって都合が悪く、ここで私の口を封じるために殺すと決められてしまう程のモノを私は見てしまったのだろうか？
確かに元々評判の悪い中で隊士が浪士を無理やり斬り殺したとなれば、体裁的にもよろしくは無いだろう。しかし、言ってしまえばそれだけ。あの浪士だってただ歩いていた所を斬り殺された訳ではない。
この引っかかりはなんだろう。これこそがこの事態を引き起こしている原因なのだろうけれど全くわからない。どころか、それが解らないほうが良いと何かが警鐘を鳴らしている。
危険だ、やっぱり私は踏み入ってはいけない所に幸か不幸か足を突っ込んでしまった。
…一体、この場に何が隠されているというのだろうか。
「…ここで私は、副長のご意見を伺いたのですが。」
思考の海へと深く沈んでいた私の意識を引き戻したのは、山南さんの声だった。
思わず辺りを見回すが、どうやら全く時間は経っていないらしい。
「俺たちは昨晩、見廻り中の隊士を浪士に斬り殺された。こいつはその場に居合わせた目撃者だ。」
役職名で促された土方さんは少しの間を置いて、ただ簡潔にそうとだけ言った。
「──ただそれだけだ、と仰りたいんですか？」
「実際、このガキの認識なんざそんなもんだとは思うんだが。」
土方さんと山南さんの瞳はお互い探り合うように交わっていた。
心象的には大分事実と異なっているが、ざっくりと言ってしまえば土方さんの言った事に間違いはない。
やはり、彼らはアレをみたからと言ってむやみやたらに殺そうとしている訳では無い。
この場に暗黙の了解として存在している最大の謎について知らない以上…少なくとも、土方さんとしては私を放り出しても構わないとどこかで思っているのだろう。
他の人たちは全く読めないし、この見立てが正しいかもわかったモノでは無いが、敵ばかりでは無いのだと思い直す事が出来て少し気持ちに余裕が出来た。
だからと言って状況が好転するとも思えないが、全く光が見えない先程までに比べれば随分とマシだ
と思えた。
「…けどよお、こればっかりは大義のためにも内密にしなきゃなんねぇ事なんだろ？新撰組の隊士が血に狂ってるなんてうわさが立ちゃあ、俺らの隊務にだって支障が出るぜ。」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
。 - 文才がすごいですね！引き込まれるような作品で、今まで見たことのない、新しいトリップものかなーと思いました。とても面白かったので、次の更新を楽しみにしています。 (2017年4月14日 16時) (
レス) id: f3711a96f0 (このIDを非表示/違反報告)
総ちゃん - 不思議な作品に釘付けでした！続きが気になります！更新頑張ってくださいね(*￣▽￣)ノ~~ ♪ (2016年10月5日 8時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：刹那 帝 | 作成日時：2013年6月1日 23時
