…第拾弐幕… ページ15
千鶴ちゃんは鞘に入れたままの綺麗な小太刀を握っているのだし、可能性はほぼない。
そもそも腰を抜かして地面に座り込んでいる。
「あーあ、僕が一人でやろうと思ってたのに。残念だな。」
「今回の様子だと、それが一番平和にすんだかもな。
…良いか、逃げるなよ。背を向ければ斬る」
…変わってる?勘違いじゃなく、物語の細やかな所が変わってる。
新撰組の面々が来るタイミングもそう、千鶴ちゃんの行動もそう。大元が変われば当然の結果のようにこの場での会話も変わった。
諦めのようにも思える、悟りの表情。千鶴ちゃんは今何を思うのか
この原作と違う状況、土方さんの考え一つ変わればこれから先の全てが変わってしまうだろう。
いつの間にか握っていた両の拳に、汗が伝う。
「はぁ…。」
重々しいため息、グッと眉間に寄せた皺は今の出来事を引き起こした彼女でない人物への苛立ちなのか。それとも目撃者を斬らねばならないという、そういう類のモノなのか。
…首にあてがわれた刀は、音もなく鞘に戻された。
「え……?ち、ちょっと土方さん良いんですか?この子、さっきの見ちゃったんですよ!?」
「いちいち余計な事しゃべるんじゃねぇよ。下手な話すると、この場で始末せざるおえなくなるだろうが。」
幾度も見たはずの光景にこれほどの安堵を覚える事は、これから先ないだろう。
兎に角、千鶴ちゃんは死を逃れた。この場で、と付け加えられた事がもしもの可能性を煽るが、ここから先に持ち込んでしまえば、彼女があの人の娘であることがわかるシーンまで行けるだろう。
「…とにかく。殺せばいいってもんじゃねえだろ。こいつの処分は、帰ってから決める」
「俺は、副長の判断に賛成です。ここに長く留まれば、人目につくかもしれない」
そう言って冷たい視線を羅刹に落とす。その後のセリフも馴染みのある変わらないモノで、安心してしまう。
内容としては決して平和なモノでは無いが、大筋を全て変えられる事に比べれば、まだ可愛いもののように思えた。
「死体の処理はいかように?肉体的な異常は特に表れていないようですが?」
「羽織だけ脱がせておけ。後は山崎がなんとかしてくれるだろ」
「御意。」
ああ、そうか。この四人が引き上げてもこの後山崎くんが来るんだよな…
どうすべきか。このまま事態を見届けて行くのも良いが、山崎くんが後始末のため入れ替わりで来るだろう、そうなれば流石に私の存在も気付かれる。
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。 - 文才がすごいですね!引き込まれるような作品で、今まで見たことのない、新しいトリップものかなーと思いました。とても面白かったので、次の更新を楽しみにしています。 (2017年4月14日 16時) (レス) id: f3711a96f0 (このIDを非表示/違反報告)
総ちゃん - 不思議な作品に釘付けでした!続きが気になります!更新頑張ってくださいね(* ̄▽ ̄)ノ~~ ♪ (2016年10月5日 8時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:刹那 帝 | 作成日時:2013年6月1日 23時