…第拾幕… ページ13
考えろ、最悪千鶴ちゃんの死が待ってるかもしれない。それは一番避けなければいけない。
…ここで私が出て行っても羅刹には勝てないだろうし、千鶴ちゃんの目の前で私が斬られて
それがもしトラウマにでもなったら駄目だ。
私だって、内心冷静という訳では無かった。
切迫する空気に鼓動は早まり、恐怖に手は震え、目の前の惨状に対する嫌悪感が胃を押し上げる。
実に様々な感情が入り乱れている。もう1時間程思案しているような気がするが、現実では三十秒も経っていない。それ程私は焦っていた。
…そう、落ち着け私。力は貰ったろう？信用していいかわからないけれど、あのお姉さんだって私
は力を持っていると、そう言っていた。
ぎゅっと、懐の短刀を握りしめる。
すぅーっと、感情の波が引いていくのがわかった。
ああ、ひぐらしで圭一君の言ってた状態ってこれかな。解答編を見ていない私は、何が正しくて、何が間違っていたかわからないけれど。彼は沙都子のために現実世界で殺人を犯そうとした、いや犯したのかもしれない。そして鬼の世界へと迷い込んだ。
なれば私は過去の世界で、鬼を斬ろう。そして本物の半鬼になろう。
「目を閉じろッ！！！」
小さく叫んだ。
何か違和感が額を掠めたような気がするが、それが何かは分からない。
ダッ、と走り出して羅刹の背後から心臓を貫き、そのまま身体を真ん中から裂く。
普通短刀を使って出来ない様な斬り方だが、容易に出来てしまった。
信じられない程の力が私の手から、腕から伝わっていた。
もう一人は首に向けて思い切り刀を引いた。
生々しい感覚が手を襲う、それは料理に使う肉と似通っていて、それが逆に怖かった。
ドクドクと生暖かい何かが、手に伝う。
幸い、返り血は飛ばなかった、血に濡れたのはこの両手だけ。
羅刹は、声を上げる間もなくパタリ、パタリと支えを無くした人形の様に倒れる。
｢…だ……誰ですか…｣
震える声で問い掛ける千鶴ちゃん。
ああ、落ち着かなきゃ、まだ、羅刹を倒して終わりじゃない。
頭の中の考えを押し込めて、なんとか台詞を弾き出す
｢誰でも良い、貴殿が思う通りの人物だと記憶して置けば良い｣
大丈夫、まだ月は隠れてる
｢それが"恩人"であろうが"人殺し"であろうが、私には関係無い｣
土方さん達はまだ、まだ居ないはずだから。
｢…じゃあ…謎の、人？｣
千鶴ちゃんが言葉を発して間も無く、月が雲間に差し掛かる。
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。 - 文才がすごいですね！引き込まれるような作品で、今まで見たことのない、新しいトリップものかなーと思いました。とても面白かったので、次の更新を楽しみにしています。 (2017年4月14日 16時) (
レス) id: f3711a96f0 (このIDを非表示/違反報告)
総ちゃん - 不思議な作品に釘付けでした！続きが気になります！更新頑張ってくださいね(*￣▽￣)ノ~~ ♪ (2016年10月5日 8時) (レス) id: 725f51c669 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：刹那 帝 | 作成日時：2013年6月1日 23時
