1話 ページ1
6月末
友達もできて、新しい環境にようやく慣れだす時期。
教室の窓際、後ろから二番目。ありがたいことに全く目立たないこの席で、明日の諸注意を聞く。うちのクラスは比較的ホームルームが短いので、本来より早くに挨拶を済ませ教室を出る。鞄を背負い直し、グラウンドに向かって歩き出す。
特に寄り道もせず靴を履き替え終わったタイミングで、肩をポンポンとたたかれた。
「あ、」
りょう「ふふ、引っかかった」
何の気もなしに振り向くと、頬に当たる指先。やられた。視線をあげると、思った通りの人がいた。
「後輩いじめないでくださいよ」
り「それ自分で言っちゃう?てか、Aはほんと来るの早いね」
「まぁ…熱心ですから」
り「だからー(笑)」
先行ってるねと笑って、福尾先輩は走っていった。流石陸上部エース、本腰じゃなくてもかなりのスピードだわ。
私もあとから歩いて部室に向かう。ドアを開けた途端、むわっとした独特の匂いが充満しているのが分かった。慣れてきたこの匂いを気にせずに、椅子に置かれたタオルの山とクーラーボックスを抱え、グラウンドに出る。
「あ、」
てつや「わっ、Aちゃんー!!会いたかったー!」
「ちょ、先輩近いです!」
て「え?キュンキュンした?」
「違います」
小「冷たっ!」
ゲラゲラと楽しそうに笑う小柳津先輩。ここ三日くらい風邪を引いたらしく、久しぶりな感じがする。この先輩は…自分で言うのも気が引けるけど、よく私に構ってくる。福尾先輩もよく話してくれるけど、なんか、違うんだよなぁ。
ちらりと顔を上げると、この先輩はまだ笑ってる。ほんっとうに理解できん。スタイルもよくて、顔もそこそこ良いんだから、めちゃくちゃ勿体ないと思うんだけど。
こんな事考えるなんて、我ながらなんて生意気な後輩なんだろうか。
やっと笑いが収まったらしい先輩は、俺行くわ、と笑って走っていった。
この後ろ姿だけ見れば格好いいとは思うんだけど、何故モテるのかは全く理解できそうになかった。悪い人ではないと、思うんやけどね。
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かのい(プロフ) - じつさん» ありがとうございます! (2019年6月8日 10時) (レス) id: 1702f55027 (このIDを非表示/違反報告)
じつ(プロフ) - かのいさん» 固定になっていましたか!申し訳ないです、直ぐに修正させていただきます、いつもありがとうございます! (2019年6月8日 7時) (レス) id: 886d351a0b (このIDを非表示/違反報告)
かのい(プロフ) - めちゃくちゃキュンキュンします!名前は固定なんですか?できれば固定じゃない方がいいです… (2019年6月8日 0時) (レス) id: 1702f55027 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:じつ | 作成日時:2019年4月23日 22時