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迷惑なんて思ってない ページ18

「お、おい…。A…。大丈夫か?」
「ええ…。大丈夫です…ははは…。」
店主が私の顔を見てドン引きする。
そりゃそうだ。だって、あれからずっと泣いてて気づいたら朝で目の下すごくクマが出来てて目は真っ赤に腫れてた。
「A。なんかあったんなら相談しろよ?誰だって良いから。なっ?」
店主はいつも優しい。私の顔を覗きこんで真面目な顔で言ってくれた。
「ありがとうございます。でも、本当に大丈夫ですから。」
言えるはずがない。私は緑川さんの事が好きだったなんて。
言ったら多分、店主は緑川さんと私をサポートしてくれるだろう。そんなことを店主にさせたら店主と緑川さんの仲に迷惑をかける。
私は、これからも緑川さんにとってただの店員として接していく。それだけで私は幸せだから。

「おはよー!A。って…!?どうしたの!その顔?!」
「佐奈、おはよう。何でもないよ。」
「いやいや…。何でもない奴の顔じゃねーだろ」
「前橋君。おはよう。二人共、心配させてごめんね。でも、本当に何でもないよ!」

佐奈と前橋君も現れて心配してくれた。そして、二人共いつでも相談に乗ると言ってくれた。
店主は、そんな顔じゃ客がびっくりするからと今日も休みにしてくれた。
………迷惑かけてばっかりだ。



家に帰る途中だった。
「すいません。…!やっぱりだ。」
肩を軽く叩かれ振り向くと、

「緑川さん!?」
「あ、しー。あんまり大きい声で言わないで。」
「す、すいません!つい、驚いてしまって。」
そうだ。緑川さんは声優さんなんだ。私みたいな一般人とは違うんだ。ファンとかもいるから迷惑だったな…。

「Aちゃん。大丈夫?その顔…。」
そういえば、今の私の顔酷いんだった!!
慌てて両手で顔を隠す。恥ずかしい…!
「…ねぇ、立ち話もなんだし。今から君さえ良ければ、どっか店でも入ってゆっくり話さない?」
え…。緑川さんと私なんかが?
「だ、駄目です!緑川さんと私なんかがいたらきっと迷惑かけてしまいますから!」
そう言った瞬間、緑川さんが私の腕を強く掴んだ。
「僕は、君を一度だって迷惑だと思ってない。」

驚いた。緑川さんのその顔を私は初めて見た。
真面目でまっすぐに私を見つめるその瞳には強く嘘ではないという思いが感じられた。

「な、なら。分かりました。緑川さんが良いなら喜んで。」
すると、緑川さんはふわりと優しく微笑んだ。



嗚呼………





私は強欲だ。








まだ緑川さんの大切な人間になりたいなんて

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作者名:坂田実 | 作成日時:2017年4月12日 18時

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