守られててもいいよね (ページ6)

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救済、ページ6

角から現れたそいつは、誰よりも大きな声で自分の大切な人のことを叫んだ。
カチ、と無慈悲な弾切れの合図が鳴る。
叫んだ彼は、目の前の人が持っている銃を弾き飛ばし、勢いよく目の前の人を平手打ちした。

「この天然馬鹿！！どんだけ遠くまで来てんだ阿呆！あろまも此方来て、きっくんは本部で上の奴等に頭下げてまで全力で御前の事探してるっつーのに、何水の泡にしようとしてんだ！！」

耳鳴りの様に響く御前の言葉に、俺は顔を顰めた。普段だったら絶対言わない暴言も、今は血や土でぐちゃぐちゃに汚れたしかめっ面で吐いてきた。長年やってきても敬語を外さなかった彼奴が、初めて外している所を見た。
胸倉を掴まれ、必死に俺を起こそうと叫ぶ彼を目の前に、胸が苦しくなる。胸倉を掴まれてるからじゃない。相手の必死な顔と、彼奴らが俺を想って全力を尽くしてくれていた事に。何で死のうとしたんだろう。何も言い返す言葉が見付からず、つい詰まって仕舞う。
ふと、頬に伝う水の感触に、顔が引き攣った。

「御免……、何も、考えられなかった。
　＿＿なぁ、" FB " 。何処も痛くないのに涙なんて流れるっけ…？」

目元の涙を拭い、少し震えた声で問い掛けた。涙なんて大笑いした時以外流した記憶なんて無い。今の状況、全く面白くもないのに、ましてや怪我をして痛いわけでもないのに、涙腺が切れた様に涙が止まらなく溢れてくる。

「ッ……何言ってんですか隊長、」

ばしっと背中を勢い良く叩き、自身の腕を担ぎ体を持ち上げる。ぐらりと身体が揺れた時、少し痛みが走ったが、そんな事で涙は出なかった。

「…そんなの、此方が聞きたい位です。」

ふと横目で彼の顔を見据えれば、彼は少し下を向き、何も喋らず、ただじっと自分を担いでくれていた。髪と髪の間から見える彼の目元には、ｷﾗｷﾗと光に反射した雫が溜まっていた。其の雫に、此方も出そうとしてた言葉が喉に詰まる。有難うなんて、口では言えなかった。
相変わらず暗い空の下、二人は並んで帰っていれば、ふと口からぽろりと言葉が漏れた。