守られててもいいよね (ページ2)

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瀕死、ページ2

「はぁっ、はぁっ…」

荒く、何かを吐き出す様に叫ぶ呼吸は、何回繰り返したのだろう。
息が出来てるのに、全く酸素を取り込んでる気がしないこの苦しさは、何回感じたのだろう。
片目だけから見える、あの黒い空を機体が泳ぐのは、何回見たのだろう。
通信機から、毎回の様に彼奴の声が聞こえなくなったのは、何回目。

時の真ん中で、戦場の真ん中で。今瀕死の状態で寝そべってる俺は、世界への御別れでも告げようとしている処だった。
こんな失態何時振りなんだろう。珍しく後ろからの気配に気付けず、諸に右の脇腹を抉られて仕舞った様だ。
だが、普通の人間は傷を負った時に痛みを感じるのだろうけれど、戦場で生きる屍(俺達)はそうではなかった。
傷を負った瞬間、相手の位置を把握し、元気よく足を支えとして踏込む。其の勢いで相手の命の元(心臓)をこの手で奪い取る。
普段からの日常の為、其の動きに迷いや乱れは一切無かった。
だからか、相手は一発で倒れ、此方も其の間は痛みも痒みも何も感じられなかった。長らく戦場で捨駒として走り回ったので、人的感覚すら正常に機能しなくなったのだろう。何て哀れで可哀想なんだろうなと、自分自身の事なのについ他人事の様に呟いて仕舞う。
だって仕方が無いじゃないか。
望んでもいないのに無理矢理不死身にさせられたこんな身体、自分自身なんて思いたくもない。なのにも関わらず、後からやってくるこの壮大な痛みが、自身の身体と意識を無理矢理にでも絡めようとしてくる。
正直に言っちゃえば滅茶苦茶痛い。人の気配の無い、落ち着いた場所に来たからこそ、今集中出来る出来事がこの傷。右半身はもう痺れて上手く動かない。微かに残っている力を使いナイフは片手に納めているも、これを振って相手を倒すのは不可能だろう。

「いって…」

息をすればする程腹も動く為、痛みが全く引かない。
生きたいが故に殺されてゆく。
今でも尚ドクドクと溢れる自身の血を横目で見据え乍、周りを警戒しかろうじて動く左手に力を込める。もし敵が来たとしても、この状態で相手に飛び掛かってこのナイフで相手を仕留められるかと聞かれたら、そんな見込み一切無い。