Ep.35「"幼馴染み"という呪縛」 ページ39
陣平くんと初めて会った時のことは、正直よく覚えていない。でも、母の言うところによれば、近所の住民として仲が良かった親の繋がりで、私達は出会ったらしい。
「おい、A!行くぞー!」
たったの一歳差、されど一歳の差。よちよちと歩行のままならない私の手を、一丁前にお兄さんの顔をした陣平くんが引っ張って、そして守ってくれた。
茶髪と灰色の目。私は純日本人には見え難かったんだろう。小さな頃、同年代の男の子の「お前の母ちゃんでーべーそー」みたいなノリの
私を安心させようとするかのように、ギュッと握ってくれた手の温かさと頼もしさは、今でも私の手に残っている。
「Aは陣平くんにベッタリねぇ」と母に心配されるくらいには、私は幼い頃から彼にベッタリだった。
段々と距離が開き始めたのは、中学に入学したあたりから。けれど逆にそれまでは、近所のよしみで研二君と千速ちゃん含め仲良く遊んでいたのだから、今更ながらすごいと思う。
私は公立の中学じゃなくて、親の希望で中学受験をした。そこそこ名門の私立中学に入学して、一足お先に公立中学に進学していた陣平くんとは、中々会えなくなってしまった。
会えば普通に話せる。
でも、学校の隔たりを超えても、
———もうずっと一緒にはいられない。
私じゃ、隣にはいられない。
そう気づいてしまったのが、中学生になった春のことだった。
そんなある時。陣平くんが家にやってきたのは、乙女の聖戦の日、バレンタインデーであった。紙袋に甘ったるい香りを詰め込んで、いかにも"不機嫌です"という表情でブッスーとした顔の彼が、インターホンに映し出されたのを見て、一瞬応答を
それは、童顔でカワイイ系の顔をしているはずの幼馴染みの顔が、そんな面影をチリほども残さぬほどの凶相をしていて、正直関わりたくなかったことも理由の一つであったけれど、それ以上に彼が不機嫌な理由が容易に推測できてしまい、かつ今日がバレンタインデーということもふまえて、どれだけの化け物をお土産ついでに持ってきたのかと考えたからであった。
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やなり(プロフ) - jenniferwu3429さん» 原作は辛すぎますよね……。 (8月13日 18時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
jenniferwu3429(プロフ) - この作品を読む度に禅院姉妹のことを思い出すな (7月13日 3時) (レス) @page4 id: 426e07a7b9 (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - RIOさん» お返事遅くなってしまいすみません!コメントありがとうございます!こうしてコメントを、いただくと筆が乗ってしまう単純なわたし……(^-^; 少しづつにはなりますが更新していくので、お付き合いいただけるとうれしいですm(_ _)m (2022年5月28日 9時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
RIO - 早く続き読みたいです! (2022年5月24日 6時) (レス) @page11 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - sou様、こ、光栄なお言葉をありがとうございます……!あらかじめ書き溜めた分はコツコツ更新していこうと思っています。完結まで私の妄想に付き合っていただけるとうれしいです(*´꒳`*)。ご期待に添えるように頑張りますね!! (2022年5月22日 9時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やなり | 作成日時:2022年5月21日 16時