Ep.1「そこは呪霊の魔窟である」 ページ4
「えー、被害者は遠藤波江さん四十八歳。杯戸町のスーパーに勤務するパートタイマーで………」
ウーウーと狂乱に喚くサイレンの音。鼻につく血の匂い。目の前を足早に通り過ぎる人達。
明らかに普通ではない空間で、私は一人、ポケーと立ち尽くした。何もできない。刑事さんが団集した人の中で話し出したのを、ポケーと眺めるしかできない。
室内には、刑事さん三人、女子高生、おじさん、小学生、あと容疑者らしき二人。なんというか、少し異妙なラインナップだ。
「……そして、その隣の方が宮下Aさんです。犯行推定時刻にこの周辺にいたのが防犯カメラに映っていたということで、一応来ていただきました」
「なるほどな」
太っちょの刑事さんが顎に手を当てた。いくつか投げられる質問に、私は上手く答えていく。
早く終わらないかな、外に七海くんを待たせてるんだよね……。
私は小さく溜め息をついた。
「ねぇねぇ目暮警部!」
「どうしたんだね、コナンくん」
わたしの今いる場所は、都内のとある廃ビルだった。何やら殺人事件が起こったらしい。
らしい、というのは、私が事件のことを全く持って知らないからである。疲れて周囲に注意を向ける気力もないから情報はすべて馬耳東風。何やらメガネの小さな男の子から視線を感じるけど、特に何も言われてないから知らんぷり。
一級呪霊数体の討祓任務。今日は七海くんと朝九時から米花町を這いずり回っていた。
連勤九日目の任務は無事成功と相成って、「自販機探すから補助監督さんと先に行ってて」と言って、ようやく見つけた自販機でガコンと微糖コーヒーを買ったとき、刑事さんに見つかった。デスマーチ続行。
任務終わりに殺人事件に遭遇。これはやはり「さすが呪霊の魔窟、米花町」と思うべきなのか。
ちなみ余談だが、米花町で呪霊を祓う際、私は呪具を持って行かない。なぜなら、殺人事件に遭遇して荷物検査に引っかかったら笑えないからである。笑えない。まさに今のように。
おもむろに左腕の時計を見やる。
「現在時刻16時49分……」
……十分したら退勤時間だ。七海くんに色々言われる前に帰りたいな。
あと、
……行っていた、んだけど。
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やなり(プロフ) - jenniferwu3429さん» 原作は辛すぎますよね……。 (8月13日 18時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
jenniferwu3429(プロフ) - この作品を読む度に禅院姉妹のことを思い出すな (7月13日 3時) (レス) @page4 id: 426e07a7b9 (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - RIOさん» お返事遅くなってしまいすみません!コメントありがとうございます!こうしてコメントを、いただくと筆が乗ってしまう単純なわたし……(^-^; 少しづつにはなりますが更新していくので、お付き合いいただけるとうれしいですm(_ _)m (2022年5月28日 9時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
RIO - 早く続き読みたいです! (2022年5月24日 6時) (レス) @page11 id: 759836d8d0 (このIDを非表示/違反報告)
やなり(プロフ) - sou様、こ、光栄なお言葉をありがとうございます……!あらかじめ書き溜めた分はコツコツ更新していこうと思っています。完結まで私の妄想に付き合っていただけるとうれしいです(*´꒳`*)。ご期待に添えるように頑張りますね!! (2022年5月22日 9時) (レス) id: 38128c49d7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:やなり | 作成日時:2022年5月21日 16時