【鬼滅の刃】君は夜明けに微笑んで、

貳 ページ4

がたがたと揺れ動く 汽車から覗く雪景色に溜め息をつく。


「故郷(ここ)とも、暫くお別れか。」


新たな担当地区、東京は初めてではない。それでも今日から其処で任務を熟すとなると、不安もあるが やはり胸が高鳴る。


都会には、美味しい甘味処が沢山有るだろう。此処では味わえなかった西洋の菓子も食べてみたい。でも、


「少し、淋しいな。」


何時も、という訳ではないがよく行動を共にした義勇と別れるのは辛い。だが、彼は一人でもあの地で頑張って行くだろう。それなら、


「私も、柱として頑張ろう。」


羽織の下に隠した日輪刀をそっと撫で、目的地に着くまで、と目を閉じる。









風が、心地好い。


「君を、暉柱に任命する。」


あの御方が そう告げる。


「有り難き幸せに御座います。これからも精進して参ります。」


地に跪いたまま、礼を述べる。すると彼がゆっくりと歩み寄って来るのが分かった。


面を上げるように、と囁かれる。顔を上げれば、彼は微笑みを浮かべ そっと私の頭を撫でた。


「これは、君が望んだ未来(・・・・・・・)でなかったかもしれないけれども。これからも、宜しく頼むよ。」


「御意。」








移ろいゆく時間は、全ての思い出を 遠い記憶の中へ連れ去ろうとする。


それでも、忘れられない。何時までも色褪せない、あの遠い日々の幸せを。




目を覚まし、窓を見る。遠くに、降りる予定の駅が見えた。



…ねぇ、君は一体何処に居るの？



小さな呟きは、誰にも聞かれる事は無かった。

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