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貳拾捌 ページ30

話し終わると、静寂が辺りを包んだ。


だが不思議と悪い心地はしない。何処かほっとしたような安堵の情が胸を浸していた。


…何れ程時間が経っただろうか。先に口を開いたのは、彼だった。


「ったく、狡い奴だ。まだ、隠している事があるだろォ?」


やはり、見抜かれてしまったか。本当、鋭い奴だ。


「うん。」


ごめん、実弥。


「チッ、俺はまだ其処まで信用されてないって事かよ。」


今から君に嘘をつく。


「そうじゃないよ。今まで誰にも話したことがないの。」


そしてこれからも誰にも話す気はない。


「だから、私が覚悟出来るまで、もう少しだけ待って。」


私が、墓場まで持っていくから。


彼は私の顔を怪訝そうな表情で見つめる。かと思えば視線を反らし、ふっと笑った。


「絶対吐かせるからなァ。覚悟しとけ。」


「それは恐いなぁ。…ところで今夜はどうする?私の屋敷からの方が近いらしいんだけど。」


「…それじゃあ泊まらせて貰おうかねェ。」


「夕餉は済ませた? 私は今からだよ。」


「まだだ。…作れるのかァ?」


「え、一応一通りは作れるよ。」


「腹壊したりしねェだろうなァ?」


「へぇ、そう思うなら覚悟しときなさい。私の料理で貴方を蕩けさせてあげる。」


「それは楽しみだなァ。あ、ちょっ、オイ、おはぎ 何処へ持っていくつもりだ?」


「勿論デザートでしょう。…そんな悲しそうな顔されてもねぇ。結局食べられるんだから我慢しなさい。」


おはぎを載せた皿を片手に、一人台所に入っていく。


人に料理を振る舞うのは義勇以来だ。彼は何時も顔を綻ばせながら食べてくれた。


旅館で働いていた時代に散々仕込まれ、直接客に振る舞う事もあったのだ。当然、自信はある。


それに今日は食材を仕入れてきたばかりだ。彼の驚いた顔を想像し、自然と口元が緩む。


鼻唄を歌いながら下準備を整え、調理を開始した。

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mikki-(プロフ) - 酸漿さん» ひぇ……お友達さん絵が上手すぎやしませんか????貴方の作品もお友達さんの絵も好きです応援してます!! (2019年7月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - mikki-さん» 友達が書いてくれたものです。登場人物紹介に載せているのは、角&耳っこメーカー様からお借りしたものです。紛らわしくてすみません。 (2019年7月29日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - 初めまして。質問なのですが、表紙のイラストは酸漿様が描いたものなのですか?教えて下さい (2019年7月29日 18時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 金糸雀さん» その通りです。夢主の母を鬼にしたのも彼です。彼は自ら会いに来るまでは待つ、という約束を律儀に守っています。 (2019年7月7日 20時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - まさか、過去の話に出てきて鬼は上弦・壱ですか? (2019年7月7日 1時) (レス) id: 359e27b0ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年6月16日 19時

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