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貳拾陸 ページ28

母の言葉に、小さく頷く。


「貴女が“儀”を終えるまで、奴等は手出しが出来ない。でも藤の花は食べ続けなさい。」


母はそう言って優しく頭を撫でる。


「貴女が“儀”を終えた時、隠し戸に入っている黒い封筒を開けなさい。其処に私が貴方に伝えなければならなかった事が、全て記されている。」


嫌な予感が、胸の中に立ち込めてくる。不安から母の手を強く握りしめた。


「貴女は正統な“暉の呼吸の使い手”よ。私の、誇り。」


ぐっと抱き寄せられる。慣れ親しんだ優しい匂いと確かな温度に、錯覚してしまいそうになる。


「貴方に全てを背負わせてしまう事になる。それでも、私は、」


母は、涙を浮かべながらも微笑んでいた。




「貴方を愛しているから。それだけは、忘れないで。」




彼女は、ゆっくりと立ち上がる。


「それじゃあ、A。私はいくわ。」


慌てて手を伸ばす。だが、その手は空を掴んだ。


「A、最後にもう一つ約束よ。」


母は私から少し離れ、此方に向かって叫ぶ。


「絶対に、鬼になる道は選ばないで。…鬼は哀しく孤独な生き物よ。大切な人との繋がりや思い出を全て忘れ、愛する者を傷付けてしまう。」


母が何をしようとしているのか、何となく分かってしまった。慌てて母の元に駆け寄ろうとする。


「これから起こる事をよく見ておきなさい、A。鬼が、どんな最期を迎えるのか。」


下がっていなさい、そう言った母の言葉は気迫があり思わず後ずさってしまう。


母は未だに驚きを隠せぬ表情の男に目をやった。


「もう、終わりよ。」


その時男は母が何をしようとしているのか分かったようで、此方に向かって走り出した。


でも、間に合わない。彼女は日の見えぬ空を仰ぎ、声高に笑った。


鬼舞辻無惨(・・・・・)、私達の刃は必ずお前を滅する!」


その瞬間母の体がくの時に折り曲げられる。苦しそうに、顔を歪めた。


だが、


母は私を見て確かに微笑んだのだ。


そしてゆっくりと唇が動き、





ある言葉を形作った。


その直後、


笑みを浮かべたその口から、









大きな、大きな手が、溢れ出した。

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mikki-(プロフ) - 酸漿さん» ひぇ……お友達さん絵が上手すぎやしませんか????貴方の作品もお友達さんの絵も好きです応援してます!! (2019年7月29日 19時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - mikki-さん» 友達が書いてくれたものです。登場人物紹介に載せているのは、角&耳っこメーカー様からお借りしたものです。紛らわしくてすみません。 (2019年7月29日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
mikki-(プロフ) - 初めまして。質問なのですが、表紙のイラストは酸漿様が描いたものなのですか?教えて下さい (2019年7月29日 18時) (レス) id: df35f93799 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 金糸雀さん» その通りです。夢主の母を鬼にしたのも彼です。彼は自ら会いに来るまでは待つ、という約束を律儀に守っています。 (2019年7月7日 20時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
金糸雀 - まさか、過去の話に出てきて鬼は上弦・壱ですか? (2019年7月7日 1時) (レス) id: 359e27b0ea (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2019年6月16日 19時

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