夜明 ページ45
此処は、何処だ?
見渡す限り真っ白な空間に、私は居た。
何も無い、寂しい場所。
「ようこそ、我が主。」
後ろを振り返れば、其処には一人の青年が立っていた。
「最初で最後の邂逅だ。」
金の髪に曙色の瞳。血縁者と言っても差し支えない程私に似ている。
「君は、誰?」
すると彼は此方に歩み寄り、その手を私の頬に滑らせる。
「僕は認めた者の前に一度だけ姿を現す、この刀に宿る精霊。君で、二人目だ。」
「二人目…。まさか、」
「その通り。初めて姿を現したのは初代煉獄家 分家当主、煉獄暁應だ。」
信じられないが、本当なのだろう。嘘をついている様には見えなかった。
「少し、話をしよう。」
その場に腰を下ろすと、彼は語り始めた。
「これは、多くの煉獄家の血を吸い、その度に無念と後悔と怒りが蓄積されてきた、呪われた刀だ。」
「…どういう、事?」
「刀を己の心臓に流れる血で鬼の血を洗い清め、次の者に託す。そうやって今まで受け継がれてきた。」
「師匠も…。」
「そうだよ。表向きは病死となっている様だけど。…この儀式で、確かに刀は力を得たが、同時に悲劇ももたらした。」
ごくり、と喉が鳴った。
「心弱き者は、刀を扱う者に限らず 一定期間この刀の傍に居ると、妖気に当てられ、ある一つの感情を増幅させる様になってしまった。」
「まさか、親戚達も…?」
「あぁ。彼等も哀れな被害者だ。」
沈黙が訪れた。
と、突然真っ白な空間に亀裂が走り、音を立て崩れ始める。
「時間がない。今から君に、彼の記憶と我が一族の願い、我が真名を託す。」
額をぴたりとくっつけられ、彼は笑った。
「我が真の名は天之尾羽張。後は、頼んだ。」
次の瞬間 身体に電流が走り、意識を手放す。
「僕から貴女に、祝福を。」
最後に、そう聞こえた気がした。
目を覚ます。どうやら布団の中で眠っていたようだ。すぐ側で眠る奴の無防備な寝顔を見て、頬が緩む。
外を見れば、既に空は白み始めていた。清々しい。思い切り伸びをして、そこでやっと違和感に気付く。
「まさか…。」
外に飛び出し、茜色に染まる空を見つめる。
これは、賭けだ。
やがて朝陽が姿を現し、夜が明けた。
どたどたと落ち着きの無い足音に、館の方を振り返れば、其処には驚きを隠せぬ表情で此方を見つめる青年が居た。
燦々と輝く太陽の下で、降り注ぐ光を全身に浴びながら、尖った歯を覗かせて微笑みかける。
「おはよう。」
強く、強く抱き締められた。
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まゆまゆ(プロフ) - 愛する猗窩座と世の中で一番惚れてる実弥との作品 キュンキュンしながら読ませて貰ってます(*´∀`)嗚呼現実で猗窩座に愛してるって言われて接吻したい(//∇//)実弥にも包まれたい (2021年3月9日 12時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - まりなさん» ご指摘有り難うございます。修正しました(^-^) これからもよろしくお願いします。 (2019年4月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 酸漿さん» コメント多くてごめんなさい。リクエスト嫌なのでしたら書かなくていいです。 (2019年4月10日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
まりな(プロフ) - めちゃおもしろいですす!!あ、時任じゃなくて時透じゃないですかね、、違ったらごめんなさい!! (2019年4月8日 21時) (レス) id: 960cfe9f67 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます。これからも更新頑張ります。 (2019年2月11日 13時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:酸漿 | 作成日時:2018年9月30日 22時