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信用 another side ページ44

「軟弱な男は俺が認めん!」

蝉の鳴く声が辺りに響く。暑さで汗が頬を伝い、ぽたりと落ちた。

「だろうなァ、過保護野郎。」

予想通りの答えに深い溜め息をついて、凛とした横顔を眺める。

「…本当に、愛い奴なんだ。」

一瞬 その目に寂しげな影が過った気がした。

「あの子には、幸せになって欲しいからな!」

だが、と付け加えて奴は笑った。

「あの子を、絶対に護る。そう約束してくれるなら、考えてやろう。」

この時はまだ、その真意を理解していなかった。




「そろそろ返事を聞かせて貰おうじゃねェか。」

横を通り過ぎようとした奴の腕を握る。この手を離せば、もう暫く会う事は出来ない。

俯いたまま動かない奴を引き寄せ、精一杯微笑んだ。

「お前の、本当の気持ちが聞きてェ。」

期待はしていない。ただ、後悔したくなかった。

「それじゃあ、」

奴が顔を上げ、真っ直ぐ此方を見つめた。

「全て終わったら、一緒に居よう。」


抱き寄せて、奴の首筋に顔を埋める。

「死ぬな。」

何故?

「勿論。」

何故あの日お前は一人で上弦に挑んだ?

『仇を討ってきます。』

…ふざけるな。

俺との約束は、どうしたんだ。


…でも、知らなかった。

彼奴が、煉獄杏寿郎がお前にとってどんな存在で、

笑顔の裏に瞋恚の炎を隠し続けていた事も

全く気付かなかった。分かってやれなかった。

…もう、遅い。

だからせめてお前と約束した未来を、この手で叶えようと今まで以上に任務に励んだ。

それなのに、

「…実弥。」

奴は顔を青ざめさせたかと思うと、突然その場に倒れ込んだ。慌てて駆け寄り、抱き起こす。

…間違いない、彼奴は鬼だ。

斬るべき存在だ。

でも、見れば分かる。

彼奴なら、皆殺しに出来ただろう。だが、全員気絶させられただけで特に目立った怪我はない。…涙の跡が、全てを物語っている。

…一瞬、奴から鬼特有の禍々しい威圧感が顔を覗かせた。だが、奴から血の匂いは全くしない。

鬼殺隊としての勘が言っている。彼奴は人を喰っていない。殺めていない。恐らく あの餓鬼の妹のように、人を喰わずとも理性を保てる方法を確立している。

『善良な鬼と悪い鬼の区別もつかないのなら、柱なんてやめてしまえ!!』

あぁ、癪だ。あの餓鬼の言いなりになるなんて、気に食わない。だが、

「コイツは、悪鬼じゃねェ。」

彼奴らが大切な者に命を懸けるというなら、この命 俺も懸けよう。

彼奴を背負い、館に向け ゆっくりと歩き出した。

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まゆまゆ(プロフ) - 愛する猗窩座と世の中で一番惚れてる実弥との作品 キュンキュンしながら読ませて貰ってます(*´∀`)嗚呼現実で猗窩座に愛してるって言われて接吻したい(//∇//)実弥にも包まれたい (2021年3月9日 12時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - まりなさん» ご指摘有り難うございます。修正しました(^-^) これからもよろしくお願いします。 (2019年4月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 酸漿さん» コメント多くてごめんなさい。リクエスト嫌なのでしたら書かなくていいです。 (2019年4月10日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
まりな(プロフ) - めちゃおもしろいですす!!あ、時任じゃなくて時透じゃないですかね、、違ったらごめんなさい!! (2019年4月8日 21時) (レス) id: 960cfe9f67 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます。これからも更新頑張ります。 (2019年2月11日 13時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:酸漿 | 作成日時:2018年9月30日 22時

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