膚浅 ページ43
静まり返った夜の町を駆ける。
今夜は何時もと違い、狐の面に己を隠すことも、態と煉獄Aの遺品を身に纏うこともしない。
今日は彼女に、飛鳥に初めて素顔を晒す。
金色が好きだと言っていた彼女は、どんな反応を見せてくれるだろう。思わず頬が緩んだその時だった。
漂ってきた匂いに 嫌な予感が胸に充満し始め、足を速める。
何かを断つ音、誰かの嗤い声。徐々に濃さを増す血の匂い。
気が付けば、走り出していた。
見えた、彼処だ。
乱暴に髪を掴まれ、刃を頸に突き付けられている。
あと、少し。
目が合う。
彼女は目を嬉しそうに細め、口元にゆっくりと弧を描いて、
落 ち た
周りに居た者達を突き飛ばし、刀を地面に突き刺して、血に濡れた彼女を抱き締める。
天之尾羽張 壹ノ型 帳
世界から、切り離された。
「体の、崩壊が止まった…。」
「でも一度斬られてしまえば、もう元には戻れない。それに、この術は長くは続かない。」
閉ざされた暗く狭い空間に、沈黙が訪れる。
ご免なさい。そう言って目を伏せれば、彼女は笑った。
「私を、お食べ下さい。」
「…でも、」
「私の中に、あの御方の血がまだ残っています。このまま消滅してしまうよりは、貴女様のお力になれる方がずっと良い。」
ほろほろと涙が零れ落ちる。
「最期に貴女に会えて、本当に良かった。」
強く、抱き締めた。
帳を解く。涙はもう乾いていた。
「お前は、何者だ?」
刃を此方に向けられる。
…私も、彼女も鬼となった以上覚悟はしていた。
だから今、許せないのは、
「嗤っていたよな?」
その場が、しんと静まり返る。
「鬼を嬲り楽しむ。…お前達は、鬼と何も変わらない。」
がたがたと彼等は震えだす。
「鬼の分際で!」
天之尾羽張 柒ノ型 焔
次の瞬間、此方に向けられた全ての刃が砕け散り、
「あ」
彼等は地に沈んだ。
やってしまった。
これ以上刀を握っていれば、怒りに身を任せて何を為出かすか分からない。慌てて刀を体の中に吸収したその時、
「…A?」
懐かしい、声。
ゆっくりと振り返る。
「…実弥。」
嗚呼、会いたくなかった。
『好きだ。』
蘇る、あの日の記憶。
『そろそろ返事を聞かせて貰おうじゃねェか。』
あ、れ?
『それじゃあ、』
この記憶は…
『全て終わったら、一緒に居よう。』
どうして忘れていた?
…やはりどう足掻いても私は鬼なのか。
直後何かが切れる音がして、意識を手放した。
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まゆまゆ(プロフ) - 愛する猗窩座と世の中で一番惚れてる実弥との作品 キュンキュンしながら読ませて貰ってます(*´∀`)嗚呼現実で猗窩座に愛してるって言われて接吻したい(//∇//)実弥にも包まれたい (2021年3月9日 12時) (レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - まりなさん» ご指摘有り難うございます。修正しました(^-^) これからもよろしくお願いします。 (2019年4月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 酸漿さん» コメント多くてごめんなさい。リクエスト嫌なのでしたら書かなくていいです。 (2019年4月10日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
まりな(プロフ) - めちゃおもしろいですす!!あ、時任じゃなくて時透じゃないですかね、、違ったらごめんなさい!! (2019年4月8日 21時) (レス) id: 960cfe9f67 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます。これからも更新頑張ります。 (2019年2月11日 13時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:酸漿 | 作成日時:2018年9月30日 22時