至福 ページ32
一陣の風に野草が一斉に葉裏を見せ、緑一色の草の海が月の光で銀に輝く。
その中心で一人佇むのは、赤髪の青年。
普段とは打って変わって穏やかな表情を浮かべた彼は、最近行動を共にするようになった一人の少女を思っていた。
他愛もない話で笑い合い、様々な場所へ連れて行っては、興奮し目を輝かせる彼女を楽しむ。彼女と過ごす毎日に、何時の間にか幸せを感じるようになっていた。
今まで戦いにしか興味の無かった自分が、此のような感情を抱く事になるとは思いもしていなかった。だがまぁ案外悪くないものだ、と一人微笑む。
草を掻き分ける微かな音に気付き、声を掛けられる前に固く閉じた瞼を、ゆっくりと開けた。
「遅い。」
その言葉は、荒くとも優しい響きがある。
口元に付いた血を拭い、何時ものように微笑み掛けた。
「ごめん、猗窩座。手間取っちゃって。」
奴は立ち上がり、手を鳴らしながら、唇を少しだけ横に広げるようにして微笑み返す。
「始めよう。」
その言葉を合図に抜刀すれば、奴も独特の構えを取った。
これから始まるのは、互いに 互いを殺す気で行う、一対一の真剣勝負。
手加減等、許されはしない。
先に動いたのは、奴だった。
筋肉の収縮、眼の動き、そして力を溜めている部位。それは鬼と成り、彼と鍛練を積んできたからこそ 見抜けるもの。
瞬きの間にそれらを見切り、次の瞬間には一直線に右の拳で私の心臓を打ち抜こうとするであろう姿が、
「__
炎の呼吸 伍ノ型 炎虎
盛虎の如き燃え立つ闘気で迎え打てば、攻撃を躱した奴が、また 拳を振りかざすのが視えた。
炎の呼吸 捌ノ型 螺旋炎
体を限界まで捻り、その勢いに乗せて円を描くように、自身も回転しながら刃を回し続ける。何度も手応えを感じるが、やはり頸は避けられてしまう。
「A！ そのままじゃ、俺は倒せないぞ！」
余裕の笑みを浮かべた奴は、次の瞬間距離を取って、見慣れた術を発動させた。
術式展開 破壊殺・羅針
奴の足元に 雪の結晶の様な陣が展開される。術の発動・身体強化の予備動作であるこの血鬼術は、奴が実力を認めた相手にしか見せない、災厄だ。
それならば、私も奴の本気に応えよう。
術式展開
全身が燃えているかの様に熱くなり、周囲を駆け巡る大気の動きが、風に舞い上がる砂塵の一つ一つが、全て手に取るように解る。
「「さぁ、宴を始めよう！」」
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まゆまゆ(プロフ) - 愛する猗窩座と世の中で一番惚れてる実弥との作品 キュンキュンしながら読ませて貰ってます(*´∀｀)嗚呼現実で猗窩座に愛してるって言われて接吻したい(//∇//)実弥にも包まれたい (2021年3月9日 12時) (
レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - まりなさん» ご指摘有り難うございます。修正しました(^-^) これからもよろしくお願いします。 (2019年4月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 酸漿さん» コメント多くてごめんなさい。リクエスト嫌なのでしたら書かなくていいです。 (2019年4月10日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
まりな(プロフ) - めちゃおもしろいですす！！あ、時任じゃなくて時透じゃないですかね、、違ったらごめんなさい！！ (2019年4月8日 21時) (レス) id: 960cfe9f67 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます。これからも更新頑張ります。 (2019年2月11日 13時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：酸漿 | 作成日時：2018年9月30日 22時
