欺瞞 ページ29
色褪せた傘を手に、雨が降る街を歩く。
砥草色の外套を身に纏い、髪を銀に変え、顔の上半分が隠れる 狐の面を被った私の姿はさぞ奇妙な事だろう。
だが幸運なことに、雨のお陰か周りには人が殆ど居らず、気楽に歩く事が出来た。
前方を歩く少女は白の羽織、そして蝶を象った髪飾りが揺れている。
「お嬢さん。」
彼女が此方を振り返ったその瞬間、一瞬にも満たない時間で距離を詰め、隠し持っていた小刀で下�劼鮖造蠅弔院�刀を奪った。
唖然とした表情を見て、にこやかに微笑む。
「大丈夫、殺り合うつもりは無いよ。ただ、話がしたいだけさ。」
悔しそうな表情でこくりと頷いたのを見て、手に持っていた風呂敷を彼女に渡す。
「開けて御覧。」
恐る恐る開けば、其処には彼女にとって見覚えの在る物が入っていた。
「こ、此れは…！」
「いやぁ、中々美味しかったよ。」
其れは、血に濡れた私の羽織。
私と面識があった彼女、栗花落カナヲなら分かる筈だ。
「最期まで彼女は勇ましく戦ったよ。その誠意に応えて、最後の望みを聞いてあげたのさ。」
怒りに体を震わせながら、此方を睨み付けてくる。
それだよ、それが必要なんだ。
「それじゃあ、後は宜しくね。」
そう言って彼女の刀を空に投げた瞬間、全速力で駆け、どーまの屋敷に戻る。
「…疲れた。」
そのまま糸が切れたように、意識を失った。
夜になり、また館を脱け出して、辿り着いたのは私の館。
様子を伺うが、私の遺品の事でお館様に呼び出されているのか、誰かが居る気配は感じられない。
二階の窓から、かつての自分の部屋に侵入し、
引き出しの奥に仕舞っておいた、白の小箱を開けば 其処にはあの赤いリボンが入っていた。
「良かった…。」
安堵の吐息が漏れ、ふと部屋を見渡せば、私が元々使っていた刀が飾られているのが目に入った。
手に取れば、異常な程しっくりくる其れは、代々受け継がれてきた、不思議な刀。
扱えるのは、私の一族の血を引き、尚且つ選ばれた人間、要するに才能を持たなければ、その真価を引き出すことは出来ないのだという。
…持って行きたいが、そんな事は出来ない。
名残惜しみながら、刀を元の場所に置こうとするが、
「は？」
刀が手から離れない。
くっついてる…。
その後十分程格闘したが取れる気配は全く無く、諦めて持って帰る事にした。
…恐らく、持っていけ ということなのだろう。
大騒ぎになるだろうなぁ…。
溜息をついて、闇に姿を晦ませた。
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まゆまゆ(プロフ) - 愛する猗窩座と世の中で一番惚れてる実弥との作品 キュンキュンしながら読ませて貰ってます(*´∀｀)嗚呼現実で猗窩座に愛してるって言われて接吻したい(//∇//)実弥にも包まれたい (2021年3月9日 12時) (
レス) id: 442319c796 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - まりなさん» ご指摘有り難うございます。修正しました(^-^) これからもよろしくお願いします。 (2019年4月13日 19時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 酸漿さん» コメント多くてごめんなさい。リクエスト嫌なのでしたら書かなくていいです。 (2019年4月10日 10時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
まりな(プロフ) - めちゃおもしろいですす！！あ、時任じゃなくて時透じゃないですかね、、違ったらごめんなさい！！ (2019年4月8日 21時) (レス) id: 960cfe9f67 (このIDを非表示/違反報告)
酸漿(プロフ) - 美桜さん» ありがとうございます。これからも更新頑張ります。 (2019年2月11日 13時) (レス) id: 511b02f073 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：酸漿 | 作成日時：2018年9月30日 22時
