違和感 ページ1
ジョングクside
「お待たせしました。300円です」
1000円札……お釣りは700円、か。
数学、ちゃんと勉強してて良かったな。
「ありがとうございました」
お釣りと商品を渡し終えて見送ろうとすると、お客が話しかけてきた。
「ありがとうございます。若いのに偉いですね」
「あ、いえ、とんでもないです……僕はただのお手伝いなので」
「十分立派ですよ。暑いだろうけど頑張ってください」
不意打ちの労いの言葉に弱い僕は、つい顔が綻んでしまった。
「あ、そうだ。１つ聞きたいことがあるのですが……」
「ええ、何でしょうか」
「毎年盆踊りがあるでしょう？その中で櫓で踊る子がいると思うんだけど、今年はどなたが踊るのかご存知ですか？」
櫓で踊る人？
盆踊りがあること自体、初めて知った。
当然、返答は……
「いえ、申し訳ございませんが……」
そう言って僕が首を横に振ると、お客はどこか悲しそうに笑って僕の肩を叩いた。
「はは、謝らないでください。知らないか聞いただけですのでね」
第一号のお客のために何か力になればと思ったのだが、こればかりは仕方がない。
すると先ほどまで静かに作業をしていたヒョンが口を開いた。
「櫓に登る子は、毎年、ひまわり園の園児と決まっておりますよね、たしか。何かご関係がある……ってところですか？」
へぇ、そんな決まりがあるのか。
「まあ、ちょっとした宝探しをしておりましてね……」
「宝探しですか、それは一体どんな？」
「とても大事な、世界で１つしかない宝物です」
今の話の流れからすると、ものではなく、おそらく人。
自分の子供？
年齢的にもきっと……
でも
お客の表情やしぐさを見た感じ
子供を愛でるってよりは
ただならぬ愛？
否
狂愛？
そういったものを感じた。
それともう一つ。
この人……
「おや、そういえば……あ、あったあった」
突然ヒョンがカバンを漁ってクシャクシャな紙切れを取り出した。
「パンフレットをもらっていたのを忘れておりました。これに確か……、うん、そうそう。盆踊りは19時開始だそうですよ。誰が登るのかはわかりませんが、お時間になったころ見にいけばわかるでしょう？」
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作者名：めめっち | 作成日時：2023年3月28日 23時
