5話 苦悩 ページ7
光 side
「2人とも食べていいよ！」とAが促すので、俺達も遠慮なく彼女と同じように大口を開けていちごパフェを頬張る。
「美味しい！やっぱこれAが好きな味だ」と俺が言うと「そうなの？よく知ってるね〜」と西島くんが俺の方を見る。
「よく知ってるっていうか、何となくそんな感じがした」
「ふーん……」と西島くんはパフェの生クリームをガトーショコラに付けて食べた。
途中、Aが御手洗に行って席を外した。
その隙に西島くんが「Aいないし、光の隣いこっと」と言って俺の隣に席を移動した。少しびっくりした。
「光ってAのこと好きなの？」
「えっ_____ 」
予想外の質問に驚き、一瞬、時が止まった気がした。
そんなこと考えたこともなかったから、頭が真っ白になる。
俺がAのこと好きってそんな_____
「ごめんごめん、いきなり変なこと聞いたね。さっきの質問は忘れて」
「Aのことは_____優しいし面白いしかわいいし何でもできるし、本当に良い奴で尊敬してるけど、好きとかそういうのはないかな。
本当、タッチの南ちゃんみたいで同じ人間とは思えないよなぁ」
俺は乾いた笑いを見せる。
Aの前では絶対に見せない表情だ。芸人として、人としての劣等感とか彼女には知られたくない。
本当にAのことは友達として好きだし尊敬してるのに、なんでこんな嫌な感情を抱くんだろう。
「えっと、なんで俺がAのこと好きだって思ったの？」
「別に。むしろAが_____ 」
「Aが何？どうしたの？」
「ううん、何でもない。俺の口からは言えない」
彼は悲しそうな目をして伏せた。そして大きなため息をつく。
「まあ、芸人仲間からは何回も聞かれてるから今更って感じだけど」
「そうなんだ……尚更聞いて悪かったね。ごめんね？
ほんと、恋愛についていろいろ聞かれるのうんざりするよね〜」
「ああ……やっぱりAAAも聞かれることある？」
「うん、専らがそれ。俺らがまだまだ実力不足だから……そんなことばかり聞かれるんだろうけど」
「実力不足なんてそんな……Aはそのこと知ってるの？」
「言えるわけないでしょ。1番ショック受けそうな子なのに。
本当、悔しいよ。Aが戻ってくるまでは先輩達みたいにちゃんとしたグループになりたかったのに。
……もう辞めた方がいいのかな」
「えっ_____ 」
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作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
