4話 見えない恐怖 ページ6
「俺ら、なかの芸能小劇場で俺の出番が終わった後に話したりするくらいだよ」
「えっ、そうなんだ……」
少し意外だった。
A経由で光の存在を初めて知ったから、てっきりプライベートでも2人で遊びに行ってるのだと思った。
なんであんなに仲良いんだろう。
「ちなみに4人で何して遊んでんの？」
「その辺の店行って、ゲームしたり、マンガ読んだり、アニメの感想会やったりして駄弁ってるだけだよー。迷惑にならない程度に」と光が緩い口調で言う。
「さすがに混んでたら食べてすぐ出るけどね」とAが付け足す。
内容からするとオタク仲間の集まりみたいだ。楽しそうだなぁ。俺もワンピースくらいなら語れるんだけどなぁ。
「店って具体的にどこ？」
「できるだけ安いとこ。何食べるとか特にこだわりないし、お金もそんなに持ってないから」と光は照れ笑いをする。
「私、最近丼物にハマってるの！牛丼とか親子丼とかカツ丼とか……
なんであんな美味しいもの今まで食べてこなかったんだろう。ほんとに後悔してる」とAは言う。
あいつ、丼物食べたことないんだ〜。何となく予想が着く。
「光やにっしーん家では晩御飯とかで食べてるんでしょ？いいなぁ」
彼女が言うと何故か嫌味とは思わない。目をキラキラさせながら言っているので、純粋に羨ましがってるんだろうな。
そしてお待ちかねの特大いちごパフェが運ばれてきた。
想像以上のデカさに俺は度肝を抜いた。約30センチくらいの高さで、贅沢にとちおとめのいちごが盛られている。
「あんた、これ全部一人で食べるの……？」と俺は聞いた。
「そんなわけないじゃん。光とにっしーにもあげるよ」
そう言って店員さんが予め持ってきてくれていたスプーンを俺と光にも渡した。
「じゃあ早速、私からひとくちいただきます！」
彼女は無邪気に大口を開けててっぺんにある大きないちごと生クリームを食べた。とてもおいしい笑顔だ。
おいしい笑顔はかわいい。
_____Aに目の前でこんな顔されて落ちない男はいないだろうな。
光の方を見ると「良かったね」というような反応を示しているものの、Aのように慈愛の表情は見せない。
_____彼女の言う通り、本当に友達だと思ってるんだ。
俺は少し彼女が可哀想に思えた。
長くからの付き合いで、ずっと好きだった男を突如として現れた女性に奪われる恐怖と背中合わせの状況にいるのだから。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 11人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
