45話 星屑ロンリネス ページ48
光side
神社の階段を下りた時、彼女は名残惜しそうにして俺の手を離した。
いつもと雰囲気の違う彼女に少しドキッとしたが、話してみると普段通りの彼女で安心した。
久々に食べる焼きそばの味に感動してたり、りんご飴がかわいいって言って写真撮ってたり。
夏祭り初めてですかってくらいめちゃくちゃ楽しんでた。
花火が始まる前にわたがしを食べる時、「楽しいね」と口にしたら彼女は頬を赤く染めて、頷いた。
花火大会が終わってからの帰り道、彼女は一言も離さなかった。
きっと慣れない浴衣と下駄で歩いていたから疲れているのだろうと思った。
待ち合わせ場所の近くまで着いた時、やっと彼女は口を開いた。
「光と会うのこれで最後にするね」
「なんで？」
いきなりの宣告に動揺を隠せない。
何？俺何か悪いことした？
「俺のことそんな嫌いだった？
嫌なところあったら直すから」
「違う」と彼女は目に涙をためながら話す。なんでいきなり泣き出すんだ？
事態の急展開についていけなくて「じゃあ何！？」とキツめに問い詰めてしまう。
「彼女いる人とは会えない。複数でも無理」
「なら愛ちゃんといる時に遊ぼうよ。愛ちゃんもそれなら良いって言うし_____ 」
「ごめん、それも無理」と彼女は悲しそうに目を伏せる。
「とにかくもう会えないから」
「なんでよ」
「別に理由なんてなんでもいいでしょ。帰るね」
足早に歩き出した彼女の腕を掴んで「待って！」と引き止める。
「理由話すまで帰さない」
嫌いになったわけでもないのに会えなくなるのが納得いかなかった。
観念したのか、彼女は「わかったよ」と言って俺の方に向き合う。
「_____好きだから」
「えっ……」
また何かの冗談だと思って、茶化そうとしたけど、彼女は真剣な顔をしたから、そこから何も言えなくなった。
「ずっと前から好きだった」
黙ったままでいると「何か言ってよ」と軽く怒られる。
「ごめん、俺、他に好きな子いるから……」
「だよね。結局そうなるよね」
気の抜けたように彼女は笑った。だけど横顔では泣いていた。
「駅まで送っていかなくていい？」
「ううん、大丈夫。それじゃあ」
彼女は少し背伸びをして俺の額にキスを落とした。
ほんの一瞬の出来事で驚きのあまり俺は呆然として立ち尽くしたまま、踵を返して去っていく彼女の後ろ姿を眺めてるだけだった。
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作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
