44話 終わりの時 ページ47
ほんとにそうなったらいいのに。だったら堂々と光に好きって言えるのに。
「いや、それはやだ」
「なら明日告白しよう。大丈夫、100パー成功するって。
私が言ってるんだから間違いないよ」
二人の仲を取り持つのも今日で最後だ。やっと苦しみから解放される。
愛ちゃんはいい子だけど、光のことがあるから会いたくない。
二人で遊ぶことが会っても光との事を惚気られるだけだから。さすがに身が持たない。
光のことがなかったら良い友達になってたのに。
「Aがそこまで言うなら……。
なんか色々悪いな。仲取り持ったりしてくれて」
「いいの。元々、私も愛ちゃんのことかわいいって思ってて仲良くなりたいと思ってたし」
その気持ちに嘘はない。男ばかりの世界のところに同世代の同性がいたら仲良くなりたいという気持ちは自分にとっては当たり前のことだった。
理系の学科にいる私にはそれが処世術みたいなもので、女子ばかりの環境に慣れていたためか、女子に嫌われることはあまりなかったからすぐに仲良くなれた。
「お笑いの話できる友達が出来て嬉しいって話してたよ」と彼が言う。
「そう……」と返すことしか出来ない。
その言葉に胸が痛む。光にだけじゃなくて、彼女にもしばらくは会いたくない。
自分から話しかけておいて、そんなこと言うのも無責任だというのはわかっている。
ただ、気持ちの整理がつかないうちは二人が幸せでいるのを見るのも聞くのも嫌なんだ。
「ねえ、今のうちに告白の練習してみる？」
私の大胆な提案に彼は「へっ！？」と間抜けな声を出す。
「普通にセリフ読みみたいな感じでいいから」
「えーっ……ずっと前から好きでした。付き合ってください。でいいの？」
「うん、そのくらいシンプルな方がいいかも」
そんなこと言っているうちに花火大会は終わりを迎えようとしている。
私達の時間ももうすぐ終わりに近づいてきた。
「じゃあ、明日上手くいくようにこれあげる」
そう言って私は近所の神社で買った縁結びのお守りを渡した。
「え、いいよ。100パー上手くいくんだし」
「念のために持っておいて」
彼は渋々とお守りを受け取った。
最後の花火が打ち上がるのを見届けて、「そろそろ帰ろうか」と口にした。
「そうだね」
また細い道を通り抜ける時、危ないからと言って手を貸してくれた。初めて彼の手を握った。少し骨っぽくてゴツゴツしていた。
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作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
