40話 雑談 ページ43
小さな賞レースでの出番を終えたあとは比較的時間が空いていた。
ちなみに今回の結果は準優勝。あと一歩届かずだった。こんなもんなのかな。いい線いったと思ったのに。
「そういえば今日、横浜で夏祭りだったよなぁ」と村上が椅子に座って伸びをしながら天井を見つめて言う。
「誰かと行くの？」
「Aと」と言うと、村上は少しの間体の動きが止まったがすぐに「ふぅー」と息をついた。
「そっかぁ、あの子やっぱり野田氏のこと誘ったかぁ」
「知ってたの？」
「まあね。ブルーちゃんからメール来てた」
「そうか、お前らメル友だもんな」
「最近会えてないからメル友に成り下がっちゃったよ」
「俺らも忙しくなりたいよー」と口にしてみる。しかし叶わぬ願いでしたー。
劇場を出てから一旦家に帰って親に浴衣を用意してもらった。どうせ花火大会行くんだから、格好もきちんとしなさいって母親が言ってた。
洗面所の鏡に映る自分の姿を確認した。紺色の浴衣か。悪くないだろう。
「ああ、こないだお土産で貰ったお菓子のお返しどうしようかしら。氷室家の人って良いもの食べてそうだし、困るわ」リビングにいる母親がパソコンで検索しながら頭を抱えて悩んでいる。
「別に適当でいいって言ってたよ。なんならパイの実で
もいいって」
「そうは言っても、それ相応のものお返ししないと格好がつかないじゃない。今度百貨店で買ってくるわ」
「ならあそこのアップルパイが好きだって言ってた。あれにしたら？」
「そうなの？なら良かったわ。
そうだ、こないだ来た秀太くんと光啓くんもかっこよかったわ〜！」
「そうでしょ〜」と自分のことでもないのに、つい嬉しくなって自慢げに言ってしまう。
母親は特に日高くんがお気に入りらしい。
「Aちゃんもほんと綺麗な子だなぁ。
それで歌も上手いなんてZARDみたいね。
ちょっと雰囲気似てると思わない？」
麗らかなZARDさんと普段のAを比べてみる。まあ、顔の造形は似てるかもしれないが。
「え〜どこが？あいつ急に芸人のモノマネするし結構うるさいし、あんなおしとやかで儚いなんて微塵も感じないよ」
「あらあの子、クールな子かと思ったけどよく笑う子だしいいじゃない。私ああいう子が息子のお嫁さんだったらなぁ」
「別に俺今日デートとかじゃないから」
親に女友達紹介するからこういう流れになるから嫌なんだよな。向こうもその気ないのにいい迷惑だよな。
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作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
