23話 鈴木改名 ページ25
村上 side
芸人に囲まれているAちゃんを俺は遠巻きに眺めていた。
俺はずっと彼女がこっちに気づいてくれるのを待っていた。
いつの日か王子様が現れると待っている白雪姫みたい！なんてね。
待ってるだけじゃ始まらないから、Aちゃんの周りにいる取り巻きが散ったら、俺から話しかけよう。
「なんだよ、Aのことばっか見て」と野田氏から核心のついたひと言。
「前々から思ってたけど、結構タイプだなぁって」
「そうなの？仲良いから後で紹介するけど」
「ありがと♪
それよりも、鈴木ぶっかけって名前変えた方がいいよね。
せっかくマヂカルラブリーになったんだし。
なんか新しい芸名ないかなぁ」
「『斉藤そっくりさん』とかでいいんじゃね？顔が斉藤っぽいし」と適当に言う野田氏。
「なら斎藤だけでいいわ」
野田氏の言う通り、渋々「斉藤」に改名することを受けいれた。
取り巻きが散って、Aちゃんは同じメンバーの男子2人とちょっとだけ喋っていた。
やっぱりイケメンなメンバーに囲まれてるから俺なんて相手にされないかなぁ、とちょっと不安になる。
そして、Aちゃんと男子2人が俺達と目が合って、こっちに向かってくる。
「光、お疲れー！」と黒髪だけどなんかチャラそうな雰囲気を醸し出すジャニーズ系イケメンが笑顔で野田氏に笑いかける、
「ありがと、日高」と野田氏が簡潔に返す。
一見2人とも見た目のタイプが違うけど、仲良いんだなぁ。
「あ、俺の相方、紹介しとく。
斉藤ね」
「どうも、斉藤です〜」と普段通りに自己紹介する。
そして、さっきのジャニーズ系が日高光啓くん、ワイルド系のもう1人の子が末吉秀太くんと名前が判明した。
「実は斉藤って芸名で本名は鈴木崇裕」って言うと3人とも目を丸くして「えっ！？」と驚く。
案外食いつきはよかったようだ。
「え、なんで斉藤？」「斉藤の下の名前とかないんですか？」「光よりインパクト強いんですけど」と次々に聞いてくる。
「んー、さっき改名したから特に意味はないかなぁ」
「俺が適当に考えた」と野田氏はドヤ顔で言う。でも斉藤ってなんかしっくりこないなぁ。しばらくは斉藤でいくけども。
「あっ、そういや鈴木さん、よく劇場で顔合わせるけど話したことないですよね」
まさかのAちゃんから話しかけてくれた。
「そうなの！俺も声掛けたかったけど、赤の他人だから嫌かなぁと思って」
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作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
