21話 マヂカルラブリー ページ23
裏口にいるのは鈴木だけで、一緒に来るって言っていた西島くんはいなかった。
「なあ、西島くんは？一緒だったんじゃないの？」
「にっしー？ああ、用事あるって帰っちゃった」
「なんでなんだろう……」とその時はただただ疑問に思うばかりだったが、今思えば恐らく西島くんの粋な計らいだったんだろう。
コンビ結成の瞬間に俺と相方以外に第三者が立ち会わない方がいいと思ったのだろう。
始まりの時はいつもコンビ2人の時がいい。
今まで相方募集の掲示板というネットの世界を通して相方と出会っていた。とにかく笑いの方向性が同じ相方を見つけたかった。
リアルでコンビを組もうと思ったのはセールスコントの時以来だった。
少し話したことある程度の奴だけで、多分笑いの方向性もネタも違うカタチだろう。
なのにどうして気持ちは同じような気がしてならない。
後日、俺達はネタの作成中にコンビ名を考えた。
2人とも身長高くて巨漢で女性にはウケない風貌だったから、せめてコンビ名だけでもかわいらしくしようと思った。
お互い1番かわいいと思った単語を出して「マジカル」と「ラブリー」が出てきた。
試しにマジカルラブリーとネットで検索したら、誰も知らないようなアニメが出てきた。
これじゃあ検索に引っかからないなと思ったので、ジの部分をヂにして「マヂカルラブリー」というコンビ名になった。
特にめちゃくちゃ思い入れがあってつけた名前でもない。ただふざけてつけただけのコンビ名。
こいつと長く続けるという未来は見えなかった。
即席コンビですぐ終わるだろう、とその時は思っていた。
しばらくは「マヂカルラブリー」の野田クリスタルと、鈴木ぶっかけで劇場で漫才をして、小さな賞レースにも出るようになった。
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作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
