19話 Respect you！ ページ21
撮影より前にまず自転車に乗れなかったので夜な夜な千晃と近所の公園で自転車に乗る練習をしていた。
そして、CM撮影当日。
徹平くんのシーンは問題なくいったが、私のシーンは何回かカットがかかり前途多難だった。
休憩中に小池くんが気さくに話しかけてくれて、演技指導もしてくれたおかげで緊張もほぐれてCMはなんとか形になってきた。
酷かった私の棒読み感は多少は解消された。
さすが売れっ子の俳優さんだけある。
「うん、なかなかいい線いってるよ」と私単体のシーンを撮り終えたあと彼が声掛けてくれた。
「ごめんね、いろいろ足引っ張って」
「全然。CMのお仕事初めてやろ？慣れてないからしゃあないよ」
「でも、MVで何回か演技はしてるんだけどあんま上手くできなくって」
「もともと歌手目指してたんやし、そんなもんちゃう」
「んー、でもできなかったり、カットかかったりすると落ち込むんだよ。
あっ、今更だけどタメ口で喋ってよかった？一応、先輩だし」
「全然ええよ、いうて２、３年しか変わらんし」
「そうなんだ。あっ、ドラゴン桜見てたよ！面白かった」
「ありがとう。Aちゃんってもうお酒飲めるっけ」
「ううん、まだ。あと1年したらね」
「えっ、まだ未成年やったん……同い年やとおもてた」
彼は絶句していた。私は既に言われ慣れていた。打ち上げの席でよく私のことを知らない方に勝手にお酒を注がれたりされたものだ。
「よく言われる」
「ええなぁ、大人っぽくて。俺たまに年確されたりするもん」
「やだよ、私本当は若く見られたいのに」
どこか既視感のある会話だと思ったら、こないだにっしーともしたことあった。
全部のシーンの撮影が終わったあと、一緒に現場にいた人間全員で映像をチェックした。
映像の私は本当に小池徹平くんに恋してるかのようで「好き」と言えずにもどかしい表情も完璧だ。
とてもレッスン生時代に演技の成績でが最下位だったとは思えないほど、役になりきれている。
「いやぁ、どうなることかと思ったけど、思ったよりいい形になりましたね！」
「徹平くんのおかげです」
「いやいや、Aちゃんも頑張ったおかげですよ！思ったより飲み込みも早かったし」
「2人ともすごい自然な感じでいいよ！」
「ありがとうございます！」と私達は同時にお礼を言った。
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作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
