1話 ライジング！ ページ3
You side
今日は少し特別な日。
まずは日焼け止め、次に下地を塗って、ファンデーションも塗る。
普段はアイシャドウやアイラインなんて塗らないけど、今日は違う。
雑誌のメイクコーナーを見ながら、誕生日に千晃からもらったメイク道具を使って鏡に向かってメイクしていく。
1番お気に入りのリップを塗って顔はこれで完成。
服は実彩子に選んでもらった春色のワンピースにブラウンのジャケット、足元はおろしたての白の厚底靴を履いて、これでよしっと！
「いってきます」
踵でトントンと足元を整えて家を出た。
都内の駅の大きな液晶画面の前で待ち人が来るのを今か今かと首を長くして来るのを楽しみにしている。
「お待たせー」と声を掛かられて振り返ったが、目当ての人ではなかった。
「なんだ、にっしーか。早く来るのも珍しいね」
「そう？
わぁ、すごい気合い入ってんね」
彼は上から下まで私の格好を見てそう言った。
割りと朝早くの待ち合わせだったので、彼は機嫌が悪そうだった。
「そんなことないよー、いつもこんな感じじゃない？」
私はスカートの右側の裾を持ち上げた。
「んなわけあるか」と彼は鋭いツッコミを入れる。
「光は？まだなの？」
「ああ……もうそろそろ来ると思うよ」
腕時計を見て私は言った。
今日は約束通り、光に特大のパフェを奢ってもらう日だった。
ちょうど春のいちごキャンペーンをやっているカフェがあったのでそこに決めた。
「ねえ、なんで俺呼んだの？邪魔じゃない？」
彼は少し不服そうだった。私の気合いの入った服を見て、そう思ったのだろう。
春のいちごキャンペーン、本当は光と2人で行く予定だった。
確かに、にっしーがいなかったらもっと楽しめただろうなとは思うが、大人気ないので面と向かっては言わないことにしている。
「そ、そんなことないよー。
他のメンバーとはプライベートで遊んだことあるけど、にっしーとは今までなかったし、ちょうどいい機会かなぁと思って」
「別に、そんな気遣いいらない」
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作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
