12話 ありがとうが言いたくて ページ14
西島 side
「ええ〜？そう？
俺、この唇とか結構コンプレックスなんだけど」
よくたらこ唇ってからかわれてて、あまり好きではなかった。
「えー？どこがいいの？あいつたらこじゃん」と陰口を叩かれているのを耳にしたこともある。
「そうなの！？初めて知った。
私はチャームポイントでかわいいって思ってた。鼻高いのも羨ましいし」
「鼻はね、お母さん譲りなの」
「きっとお母さんも素敵な方なんだろうね」
「さっきからすごい褒めるね？そんなに褒めてもお菓子奢ってあげないよ」
「いいよ、自分で買えるし。
本当に羨ましいと思ってるの。私にはそういうチャームポイントとかなくて」
彼女は正統派美少女という言葉が相応しい顔つきで、非の打ち所がない代わりに、似顔絵を書こうと思ったらイマイチ特長を捉えづらい部分が有る。
でも滲み出る奥ゆかしさと華があるからみんなに存在は覚えられている。
「俺はAが羨ましい。華があるし芸能人になるべくしてなったんだろうなって。
もう自ら発光してんのかってくらいキラキラしてるもん」
実際そうだった。例え曇りでも照明当てなくてもAの存在はすぐにわかる。
Aの近くにいる人はいつも以上に輝きが増して見える。
「発光ダイオードかよ。
まあ、ありがとう。そう言って貰えて嬉しい」
彼女ははにかんで笑った。
久々に本人を目の前にして、褒めてみた。
面と向かって言うのはやっぱり照れる。
いつも宇野ちゃんとか日高とか直也くんに「あいつやっぱすげーよ」って言うだけで満足してた。
これからもそれでいこうと思う。
「でも、そんなに羨ましい？」
「うん。俺よく華がないとか言われるから。
なんでセンターになったのか未だによくわかんない。
水島さんも他のスタッフさんも誰も教えてくれない」
「私にはわかるな。
にっしーはステージにいる時が1番キラキラしてるから。実力もあると思うけど、やっぱりそれが理由じゃないかな」
「俺が、キラキラ……？」
「うん！
受験の息抜きにたまにテレビでAAAのこと見てた。
確かにキラキラしてるなんて自分じゃわからないし、目に見えないものだし証明することも難しいけど、私は1番にっしーが光って見えた」
「……ありがとう。
あ、練習の時きついこと言ってごめんな。宇野ちゃんの言う通り、言いすぎた。
俺、なんか最近焦ってて」
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作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
