10話 絶対的美少女 ページ12
「そういう話し合いは他所でやって。
みんながいるところでやられたら気分悪い」
「ごめん」「ごめんなさい」
私とにっしーは同時に謝った。
「そうだぞー、2人ともエースなんだから仲良くやってもらわなきゃ」とマネージャーの白戸さんも言う。
「いや、私はエースなんかじゃないです」
私は間髪を入れずに白戸さんの言うことを否定した。
にっしーは「俺もそんなんじゃないです」と言い残してスタジオを出てどこかに行ってしまった。
「謙遜することないのに」と実彩子が言う。
「そうだよ、A！『AAAの絶対的美少女』って推されてんだからもっと自信持ってもいいと思うよ！」
千晃が跳ねるような声で言った。
「いいなぁ、私もAの顔になりたかったなぁ」と友香里は軽くため息をつく。
「気持ちはわかるよ、ぶっちゃけ、顔だけでご飯食べてけそうだもんな〜」と日高は腕で私の肩を小突く。
何故か素直に喜べなかった。
_____結局顔しか見てくれないんだ。
あいつらだってそう。これから関わっていく周りの業界の方たちもきっと_____
若さゆえか私はそんなふうに勘違いしていた。本質が見えていなかった。
「最近復帰したばかりで話題性も抜群だしなぁ。これからどんどん売り出していくんじゃね？」と秀太が言う。
その横で真司郎が面白くなさそうな顔をしているのが視界に入ったが、見ないふりして目を逸らした。
「えー、そうなったら俺ら遊ぶ時間なくなっちゃうじゃん」と日高は言う。
「3人で集まって勝手に遊んでる時あるでしょ」
「そうやけどさぁ。あ、最近、西島も来るようになったね」と秀太が言う。
「うんうん、でもAも後で合流するよって言ったらやっぱりいいって帰っていく時あるけど」と日高も言う。
「それは聞きたくなかったなぁ」と私は苦笑いして言ったが、内心は少し傷ついていた。
「まあ、氷室。野田ってやつと会うなとは言わないが、プライベートで勘違いされるような行動は慎めよ。1部のマスコミも氷室のことを狙ってる」
白戸さんは重々しい表情を見せる。
「特に男のファンでお前の熱愛が出たら発狂するやつは多いと思う。もし恋人がいたとしても上手く隠してくれ」
「なんで？私、アイドルでもないのに」
「氷室がそう思ってなくても、事務所がそういう方針なんだ。
氷室についた太客を手放すわけにはいかないから」
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作者名：西木野海未 | 作成日時：2021年10月5日 3時
