花が7輪 ページ8
「ごめんなさい、取り乱しちゃって。」
まだ落ち着かないざわざわとした感情のまま紅茶を淹れながらへら、と笑って見せる。
あの後、慌てて信号銃を放り捨てたのだが、どうやら私は悪夢のせいで半狂乱になってしまい、１発部屋の本棚の所に撃ってしまっていたらしい。
サベダーさん曰く、銃声と私の叫びに駆け付けてくれたらしい。
深夜だったので騒ぎにはなっていないようだが、サベダーさんの場合、傭兵だから銃声にはより一層敏感なのだろう。
「いや、俺は別に大丈夫だけどAは？」
熱い紅茶を一口飲みながらサベダーさんが肩を竦めた。
「大丈夫ですよ。いやー、すみません！幾つになっても嫌な夢って見るものなんですねぇ。」
ペラペラと無駄口を叩いて笑って見せるが、内心まだ震えて蹲っていたい。
こんなにも臆病な自分を鼻で笑ってしまいたい。
「別に構わねぇよ。怪我しなくてよかったな」
サベダーさんはカップを置いて、紅茶のお供に出したクッキーを頬張る。
さっきまでの雰囲気が一気に子供っぽいものに変わって思わず笑みが溢れる。
「嫌な夢ねぇ…、俺もたまに見るな」
「サベダーさんがですか？」
少し意外だと思いながら私も紅茶で乾いた口を湿らす。
「意外だろ？俺って意外と図太いタイプじゃねぇんだよ」
何故かどや、と得意気なサベダーさんに素直にも頷いた。
「…多分さ、お前も俺と同じだと思うんだよ」
「…同じ？」
どういうことだろう。
私からしたサベダーさんは、明るくて少し子供っぽい人という印象。
それに比べて私は、芸人の皮を被った嘘吐きな臆病者。
…一体、どこが同じなのだろう。
「お前も俺も、きっと周りに助けを求められないタチなんだろ。」
辛い辛いと喚く癖に、周りに助けを求めるのは嫌。
＿＿＿都合のいい、弱虫。
本当にその通りなのだ。
「…あー、湿っぽい話しちまったな。すまん。ほんの冗談のつもりだったんだが…」
「……はは、大丈夫ですよ。」
今、私は上手く笑えているだろうか。
どうしてか、サベダーさんの真っ直ぐな瞳が、とても辛い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こなつ(プロフ) - うう！面白すぎます…！！更新待ってます！！！素敵な作品ありがとうございます(>_<) (2022年8月20日 17時) (
レス) @page12 id: 69f5122ea8 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん - すきです………… (2021年4月25日 1時) (レス) id: 8f4dafaac9 (このIDを非表示/違反報告)
No.3(プロフ) - え……すｯｯｯｯき…更新頑張ってください！ (2021年4月6日 12時) (レス) id: 655f0d1f1e (このIDを非表示/違反報告)
えびのおすし(プロフ) - えでん.さん» わああああああありがとうございます！！こんな自己満作品ですが、更新頑張ります！！ (2021年2月17日 7時) (レス) id: 898286a51e (このIDを非表示/違反報告)
えでん. - めちゃめちゃ好きです…!!更新頑張って下さい!!!!!!!! (2021年2月17日 1時) (レス) id: 2913ebe5a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えびのおすし | 作成日時：2021年2月11日 9時
