花が3輪 ページ4
「Aさん、サベダーさん、おはようなの！」
「おはようウッズさん。」
「おう、」
食堂に入るとさっきの静かな中庭とはうって変わり、朝食の匂いと賑やかな話し声が部屋に充満していた。
私が住んでいた所はこんな賑やかではないからいつ来ても少し新鮮で落ち着かない。
尤も、大道芸人は社交性が無いとやっていけないので貼り付いた笑顔で誤魔化しているのだが。
配膳をしていたナイエルさんの所へ向かう。
今日の御飯はフチがカリッと焼けた半熟のベーコンエッグとサラダ、バタートースト。
ここの朝御飯はいつもしっかりとしていてとても美味しそうだ。
ここに来るまで、まともに食事を摂ったことが無かった私にとっては最高の朝御飯だが、万年食べ盛りの野郎共には物足りないらしい。
「A、これやるから肉くれよ」
「サベダーさん、トマト要らないです…」
ひょいひょいと自身のサラダから器用にトマトだけ私の皿に乗せてベーコンを強奪された私を見て前にいたクラークさんがクスクス笑った。
やめてほしい。私のライフはもう０だ。
「御馳走様でした」
「…お前食わなすぎじゃね？トースト残ってるぞ」
「うん、ちゃんと食べなくては力が出ないよ？」
御盆の上に残っている御飯にサベダーさんは眉を寄せた。恐らく、クラークさんも。
「僕、かなり食べたと思うんですけど…」
こればかりは嘘じゃない。今日はかなり食べた方だ。
というかそもそも比べる対象が違う。
食欲旺盛な男と、食に対して頓着が無い女。
「お前いつか死ぬんじゃね？」
「はは、面白い冗談ですね。」
芝居掛かった仕草で片目を閉じて肩を竦める。
＿＿＿でも、内心穏やかじゃない。
‘あの街’には生きたくても食べれない子達がいっぱいいた。
でも、サベダーさん達と私はお腹がいっぱいになるまで食べられる。
…そんな事実が、“罪悪感”という鎖になって私の首に巻き付いてくるような、そんな気がして。
ああ、違う違う。
私が表にするべき感情はこれじゃない。
＿＿＿へら、と笑って右手を首の後ろに置く。
「酷いこと言いますね〜。」
……本当に、
私の嘘にはヘドが出る。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 56人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「第五人格」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
こなつ(プロフ) - うう！面白すぎます…！！更新待ってます！！！素敵な作品ありがとうございます(>_<) (2022年8月20日 17時) (
レス) @page12 id: 69f5122ea8 (このIDを非表示/違反報告)
ぬん - すきです………… (2021年4月25日 1時) (レス) id: 8f4dafaac9 (このIDを非表示/違反報告)
No.3(プロフ) - え……すｯｯｯｯき…更新頑張ってください！ (2021年4月6日 12時) (レス) id: 655f0d1f1e (このIDを非表示/違反報告)
えびのおすし(プロフ) - えでん.さん» わああああああありがとうございます！！こんな自己満作品ですが、更新頑張ります！！ (2021年2月17日 7時) (レス) id: 898286a51e (このIDを非表示/違反報告)
えでん. - めちゃめちゃ好きです…!!更新頑張って下さい!!!!!!!! (2021年2月17日 1時) (レス) id: 2913ebe5a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：えびのおすし | 作成日時：2021年2月11日 9時
