曇りの中 【猗窩座】 ページ3
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「ねぇ、猗窩座さん。強さに拘る理由って、何?」
肌寒さを感じ、薄着なことに後悔する。
夏でありながら、少しも暑さを感じられない。ここ最近曇りが続いているので流石に日光が恋しく思えるけれど、それでは彼といられる時間も短くなってしまう。
毎日会ってはいるけれど、それも夜の間だけであり、貴重な時間なのだ。
「何だろうな、自分で考えてみたらどうだ?」
興味がない、と言うように私の髪を弄っている猗窩座さん。一応夜ではあるが、髪が乱れてしまうのは嫌だ。
飽きないのかと聞くと、飽きはしない、と答える。
「お前だって、人間であることに拘る理由があるのか? A」
さっきまで髪を弄っていた手を離し、私の顔を覗き込む猗窩座さん。目玉に刻まれた“上弦参”の文字が目に入った。
猗窩座さんは鬼。それも、十二鬼月という鬼の中でも強く、特別な者らしく、何より強さに拘りを持っていた。
「さぁ、何ででしょう。自分で考えてみたらどう?」
猗窩座さんを真似てみると、頰を引っ張られる。
「……何? 痛い」
「お前が鬼になれば、永遠に共に居られるのにな」
普段は絶対に聞かないような言葉をポツリと漏らし、少し寂しそうな顔をする。
圧倒的な強さを持っていても、心の奥では何かに怯えている。
猗窩座さんにはそんな印象があった。
だから、恐怖を感じなかったのかもしれない。
「でも、私は人間のままがいいんだよね。猗窩座さん私が死ぬまで一緒にいてくれるんでしょ? なら、いいの」
「そうか」
へにゃりと笑うと、私の頰を引っ張っていた手が背に回された。
強く抱きしめられて、顔が紅潮する。顔を擽る髪が、ひどく綺麗に思えた。
「なら、簡単には死ぬな」
「そこは『俺が守る』じゃない? わかってないなぁ、猗窩座さんは」
くすりと笑うと彼も少し笑った。
「人間って、思ったよりすぐに死んじゃうから。だから、ちゃんと守って欲しい」
何百年も生き続けるのであろう彼と、いつ死んでしまうかもわからない、人間の私。
本来ならば食う食われるの関係でありながら、私達の間にはしっかりと愛がある。
「私は死ぬまで、猗窩座さんのこと好きでいるから。だから私のこと忘れちゃ駄目だからね」
それがとても嬉しくて。私は何度も、彼に問いかける。
「嗚呼、A。俺もお前のことを愛そう」
私はこの甘い関係に、いつまでも酔いしれていたい。
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猗窩座さんの口調が謎
リクありがとうございました
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日陽(プロフ) - 鬼最高です!矢琶羽との夜のお出かけとか良いですか?最終的に2人がキスしてる所を読みたいです!難しいかもですがお願いします! (2019年6月23日 7時) (レス) id: cc8b6e8cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ々(プロフ) - 鬼達のみの小説、素敵です! リクエスト受付とのことですので、「響凱」でお願いできますでしょうか(*´・ω・`) (2019年6月18日 17時) (レス) id: 5e3da37f48 (このIDを非表示/違反報告)
罪樹積み木 - 妓夫太郎の小説いいですかね……? (2019年6月9日 0時) (レス) id: 3885c57797 (このIDを非表示/違反報告)
野良 - 鬼舞辻無惨お願いします!! (2019年5月3日 8時) (レス) id: 692818d29c (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 敵側の鬼以外無理ですか? (2019年1月25日 11時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:薄氷 | 作成日時:2017年8月8日 11時