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甘美な恋 【矢琶羽】 ページ1


「矢琶羽ちゃん!」
パタパタと駆け寄ってくるAに、儂は顔を向けた。

「大福持って来たよ。一緒に食べよ、矢琶羽ちゃん」

にこりと笑って、Aは儂の隣に腰掛けた。

いつも決まって夕日が沈む頃に、菓子を手にしてやって来ては、一緒に食べようと誘ってくる。

鬼は、人間を主食とするが、此奴は人間でなく、人間の作る菓子を好いている。

何度言おうとやめる気配のない「矢琶羽ちゃん」という呼び方も、毎日のように持ってくる菓子を食べることも、儂にとってはもはや日常の一部となっていた。

「大福は好かん。目に粉が入る上、着物が汚れる。不快じゃ」

手のひらにある目玉を向けて文句を言うと、Aはまた笑う。

「考えてなかったや。矢琶羽ちゃん、手にあるからね、目」

自分の分を美味しそうに頬張りながら、クスクスと笑うA。何がそこまで楽しいのか。

大福を平らげて、満足げに手についた粉を払ったAはもう一つの大福を手に取った。

「はいこれ、矢琶羽ちゃんの分。食べさせてあげようか?」

これが目的だったようで、Aは嬉嬉としておる。

嫌じゃ、と即答すると、Aは落胆する。

「矢琶羽ちゃん、ひどい」

「普通じゃ。何が良くてお前に__」

反論しようと口を開いたところで大福を口に押し込まれた。

最初からこうするつもりだったようで、Aは悪戯っ子のように笑っておる。

「ごめんごめん。やってみたかったんだよね、こういうの」

可愛く言おうと、大福なんて押し込まれたら窒息しかねないもの故、許せぬ。

「でも、大福美味しいでしょ?」

何処からか取り出した紙を渡してくるAの頭を儂は思い切り叩いた。

「痛っ」

「何が『痛っ』じゃ。悪ふざけも程々にせんか」

「満更でもないくせに。照れてるでしょ」

何処までが冗談かわからない言い方に溜息が漏れる。

「出鱈目ばかり言いおって。大福は美味だったが、満更でもないくせにとはなんじゃ」

「やっぱり図星じゃない? 私は帰るね」

さっと立ち上がって歩いていくAはふと何かを思い出したように振り返った。

「なんだかんだ言っていつも一緒に食べてくれる優しい矢琶羽ちゃん、大好きだよ」

今までみたことのないくらいの満面の笑みとその言葉は、どんな菓子より甘かった。









▽▼▽

何これ。

矢琶羽ちゃんにお菓子を食べさせかったとこまでは覚えてます。

調子に乗った夢主ちゃんは当然、しばらくは大福三昧にします

儚い愛情 【蜘蛛母】→



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日陽(プロフ) - 鬼最高です!矢琶羽との夜のお出かけとか良いですか?最終的に2人がキスしてる所を読みたいです!難しいかもですがお願いします! (2019年6月23日 7時) (レス) id: cc8b6e8cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ々(プロフ) - 鬼達のみの小説、素敵です! リクエスト受付とのことですので、「響凱」でお願いできますでしょうか(*´・ω・`) (2019年6月18日 17時) (レス) id: 5e3da37f48 (このIDを非表示/違反報告)
罪樹積み木 - 妓夫太郎の小説いいですかね……? (2019年6月9日 0時) (レス) id: 3885c57797 (このIDを非表示/違反報告)
野良 - 鬼舞辻無惨お願いします!! (2019年5月3日 8時) (レス) id: 692818d29c (このIDを非表示/違反報告)
美桜 - 敵側の鬼以外無理ですか? (2019年1月25日 11時) (レス) id: 87339a530e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:薄氷 | 作成日時:2017年8月8日 11時

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