ヘキサグリアの妄想小説-風- (ページ2)

今日:1 hit、昨日:1 hit、合計:1,287 hit

魔導師？ページ2

「･･･リリィ、まさかアスカの時と同じことをしでかしたとでも言うのかい？」
「まぁそういう事ね」
至極あっさりしたリリィの返答にマティウスはまたも頭を抱える。それを見てわたわたとするシェリーを、リリィが面白そうに笑いながら見ていた。

「何故キミはなんの相談も無しに人間を連れ込んでくる･･･」
「だって、また怪我しちゃったんだもの。アスカもそうしてくれたけど、シェリーも怪我を治してくれたのよ」
足首を見せつけるリリィに、マティウスは首を傾げる。
「どうにもなっていないじゃないか」
「そうよ？なんてったって、シェリーが治してくれたんだからね！」
依然、疑問符を頭の上に浮かべる三人にリリィは誇らしげに胸を張る。
それと対照的にシェリーは、えっと、あのぅ、と何か言いたげに、そして焦るように足踏みをしていた。

「だって、シェリーは魔法が使えるのよ？」
「り、リリィちゃん･･･！どうしてそれを言うのですか･･･？」
「だって、隠したって仕方ないじゃない！アタシ達だって魔導師なのよ？」
得意げに指先にピンクの光を散らしながら見上げる。

「アスカの時と同じじゃないかい･･･」
身に覚えのあるやり取りに声を失っていた三人だが、やっとのことでデボラが口を開いた。
「魔法を使える、という事は･･･キミもどこかの魔導師なのかい？」
マティウスの問いかけに勢いよく首を横に振る。
「ま、魔導師･･･？違いますよぉ～･･･シェリーは魔導師じゃないのですよ～･･･」
両手を突き出して困ったように否定するシェリーの髪は、嵐の後のように乱れに乱れていた。
「シェリーは･･･リリィちゃんの言う通り、魔法は使えるのですよ･･･なのですけどね～･･･その･･･魔導師とは違うのですよ･･･」

早口にそう言うなりシェリーは情けない声を上げてしゃがみ込み、顔を隠してしまう。
「お願いなのですよ～･･･シェリーをお里に帰して欲しいのですよ･･･人と話すのは慣れていないのですよ～･･･」
巨体からは想像もできない、摘みたての綿花のような、もしくは、温かい綿あめのような･･･そんなふわふわした声を発しながら再び縮こまる。
そんなシェリーを眺めつつ、マティウスはリリィと向き合った。
「何故何も言わずに連れてきた･･･？ヘキサグリア城に入られたからにはこのまま帰す訳にもいかないと分かっているのか？」
「分かってなきゃ連れてこないわよ」

二人のやり取りに、シェリーの情けない声がまたも響いた。