ドゥーガルと屋根裏 ページ21
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塵と埃にまみれた屋根裏部屋。
陶磁器の食器が沢山並んだ棚が、所狭しと床から天井まで伸びる。小さな小窓から月明かりが差し込み、銀色でけむくじゃらなデミガイズ──ドゥーガルの姿を照らし出した。
奇妙な姿形とは裏腹に、ドゥーガルはハンドバッグからそろそろとお菓子を取り出す。その姿はどこか人間じみて。
「あいつの目は、確率に基づいてものを見てるんだ。少し先の未来の出来事を予測する力がある」
そろそろと。足音に気を付けながらドゥーガルの背後に忍ぶニュートの講釈に、「ただしそれを余り教えてくれないの」とメラは付け加えた。
パッと見えて、それだけらしい。元々余り喋らないのに、目が青くなった時は輪をかけて無口になるのがこの子だった。……頭が良すぎて口が追い付かないだけかもしれないけれど。
自分で食べるでもなく。手にもったお菓子を"何か"差し出すようなドゥーガルの不自然な動きに、ティナが怪訝そうな声を上げた。
「それで、今は何してるの?」
「子守だ」
「え? 今なんて──?」
「僕が悪いんだ。全部集めたと思ってたけど──数え間違えてたらしい」
言いながらニュートはデミガイズの横まで歩みより、そっとその場に膝を付いた。それと同時、彼の指示で裏手から回ったジェイコブとクイニーが、本人達なりに──「予想しづらい動き」を意識して扉から入ってくるのを横目で見る。
「……もう少し小さな場所にいてくれたら良かったんだけど……やっちゃったわね」
疲れたようなメラの言葉と共に樽木の裏が大きく波打って、天井がみしりと音を立てた。隣でティナの顔が盛大にひきつり、ジェイコブは悲鳴じみた声を上げる。
「オカミーは伸縮自在なんだ。広い場所があれば、それだけ大きくなって──空間を埋める」
巨大な蛇らしきとぐろ───掌に乗る筈のサイズから
ニュートはふわりと笑んでオカミーと目を合わせ、オカミーも彼の姿に気付いて首を伸ばす。
小さな鳴き声で《ママ》と呼んだオカミーの言葉は分からない筈なのに───やっぱり不思議な事に、フィーリングなのか愛なのか彼は正しく答えを返した。
優しくその手を上げて。
「───ママはここにいるよ」
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とーふ(プロフ) - 心情の変化を細かく描いてくださっているので、場面が変わるごとに私自身も感情が変わってました笑 素敵な作品をありがとうございます。少しずつ関わり方も変わるのかな?と思いながら、更新を心待ちにしております! (2022年4月10日 0時) (レス) @page31 id: ab5a3330b3 (このIDを非表示/違反報告)
時々雨(プロフ) - スクイブってマグルにも魔法族にも何にもなれぬとても難しい位置にいるんだと感じました。なかなか進展しなそうな難しい恋ですね、これからどうなるのか楽しみです♪ (2022年1月29日 8時) (レス) @page31 id: 6532c97378 (このIDを非表示/違反報告)
Kaede.0807(プロフ) - めっちゃ好きな作品です!更新楽しみに待ってます!! (2020年11月15日 20時) (レス) id: 3d85b18928 (このIDを非表示/違反報告)
nasiremon - 取引のところで泣きました……夢主の気持ちが心に刺さりました……あとニュートがかっこいい……更新頑張ってください!! (2020年6月17日 23時) (レス) id: fa0cba8ed9 (このIDを非表示/違反報告)
みかこ(プロフ) - 皆様コメントありがとうございます!私事で更新が間延びしてしまいましたが、これからものんびり更新していく予定です!ニュートと夢主の行く末を何卒これからもよろしくお願いします!! (2019年10月22日 17時) (レス) id: 3d953e5ca0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みかこ | 作成日時:2019年2月3日 19時